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また、平成6年度及ぴ7年度に実施した「技術員・工員の過不足感」についてのアンケート結果は表1-3のとおりである。
平成6年・7年とも回答約600社のうち約30%の企業が労働力不足と回答している。
若年者の第三次産業への志向が強いことと併せて、合計特殊出生率が年々低下(平成8年約1.5人弱程度)し少子化傾向の定着などから、将来的には就業可能人口が減少していくことが明らかであり、造船協力業の人材・労働力確保は益々困難になると予想される。
このままでは近い将来労働力不足で事業継続が困難となり労務倒産の続出することも懸念される状況である。
海運造船合理化審議会は、平成8年に出した意見書の中で「わが国造船業の課題と対応」と題し、生産性・国際競争力の一層の向上、為替変動に強い体質づくり等と並んで、わが国造船業に従事する労働者の高齢化の進展、団塊世代の大量退職に備えた優秀な人材の確保等に対応するために、“就労環境、雇用条件の一層の改善”を図る必要がある、と指摘しており、造船業、造船協力業界全体としての改善努力を含めた効果的な対応が必要である。

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(2)受注価格大幅低下で困難な採算維持
平成4年以来の為替変動、受注船価の低下などにより、当業界の受注価格はそれ以前に比べ平均約30%程度低下している。為替は平成7年以降円安に転じ比較的安定を保っているものの、受注価格はせいぜい横這いであり値戻しまでには至っていない。世界的な供給能力過剰が懸念されるなど船価の改善は難しいとの予測もなされており、当面値戻しを期待できない可能性もある。
一方、船価はともかく量的な側面だけから見れば、わが国造船業の建造受注は好調であり平成8年末の時点でおよそ2年分の仕事量を確保したとみられている。
当業界も、地域的にまだら模様はあるものの、量的には総じて豊富な仕事量があるものと推定されるが、ここ数年の受注価格のダウンが大幅かつ急激であったことから、売上高べ一スでは過去3年連続で対前年度比マイナスが続き、平成7年度もようやく横這い程度という惨状である。
したがって、売上は減少しているにもかかわらず、仕事は多忙で残業が増加するなど採算のとれない赤字受注が続いており、平成6年度以降は殆どの企業で経常べ一スの損益が悪化している。今後もコストアッブ要因として週40時間制の適用が間近(平成9年4月)にひかえていることもあり今後更なる採算悪化が懸念されるところである。
(3)個別企業レベルでのコスト低減には限界
受注価格のダウンがきわめて大幅であっただけに、当初は事態の推移を首を疎めて見守るしかなかった企業も、時の経過とともに気を取り直し対応におわれていると思われる。
当業界(特に構内企業)では受注コストの大半が労務費や下請工賃であることから、平成7年の調査では、業界の賃金制度・賃金構造の実態や賃金体系の見直し意向等について調査を行ったが、現状の業界の賃金水準は他の多くの業種と比べても低水準にあるものとみられ、ここからなお賃金がダウンすることによる労働意欲の低下、労働力確保がますます困難になる可能性が高いなどのマイナス面も無視できず、現状維持、役員報酬の一部カット等がせいぜい実行可能な限界とみられる。
逆に、ここ3年程度従業員給与を据え置いている企業については、必要な人材確保のためには今後賃金の上昇は避けられない可能性が高い。

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また、下請費・外注費も労務費に次ぐコスト要素であるが、労務費と同様な意味合いにおいて下請企業の離反を招きかねず命取りになる恐れもあることから下請への転嫁はなかなか進んでいないと思われる。
一方、賃金、給与の見直し、下請費の抑制以外に考えられるコスト面での対策としては「工程の見直し・合理化」「外注から内製化へ」(又は逆に「内製から

 

 

 

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