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第1章造船協力業をめぐる環境変化と課題

―3年間の調査結果を振り返って―

 

 

1.調査の目的・概要

 

わが国造船業界は平成4年以降平成6年半ばにかけて1ドル=80円を超える円高に直面し、その国際競争力を維持するためにドラスティックなコスト削減を迫られた。造船協力業界はそのため受注価格大幅ダウンなど大きな影響を受けることとなった。
平成7年以降は円高修正もあって、平成8年末には造船業の建造受注が3年連続で1千万トンの大台を越えることが確実視される等まずまず順調に推移しているといえるが、韓国造船業の大幅な設備拡張による需給ギャップが懸念されており、低迷状態にある船価の改善は困難な見通しである。そのため造船協力業の受注価格は依然底這状況にあるものとみられ企業体力も著しく疲弊し弱体化している。
また、元請企業はこの間コスト競争力の維持・向上等のため地域に分散していた事業所の集中化や修理部門の縮小を進める一方、より高度で付加価値の高い船舶やメガフロートの開発、新規事業分野への進出、高度情報化の推進等急速な事業革新を進めており、業界としてはこのように変貌しつつある造船元請の事業革新を視野に入れつつ適切に対応していくことが求められている。
本事業は、業界をめぐるこのような環境悪化を背景として、業界の実態を正しく把握するとともに業界として中・長期に取り組むべき課題を明らかにし、今後の事業や業界対策に反映させることを通じて基盤強化に貢献しようとするもので、公認会計士等専門家のご協力を得て平成6〜8年度にかけ調査研究を実施したものである。
3年問の主要な調査内容は表1-1のとおりである。
平成6年度は、アンケート項目を広範囲に設定し、業界の経営実態と事業二ーズのあらましを把握することを目標とした。
一方、平成7〜8年度は、6年度の調査結果をもとにして、造船業、造船協力業を取り巻く環境変化への対応を中心に調査を行ったが、特に、元請から下請への単価・価格の圧縮要請、リストラに伴う旧来の系列取引の縮小・流動化、また元請造船所の高度情報化への取り組みの進展等の諸問題に対処していくうえで、経営資源のより効率的な活用を目指すという視点からコストの節減や労働力不足に対応していくための企業同士の協調・提携関係の促進、業界としての応援システムの成立の可能性についてヒアリング調査等を行うとともに、新規事業分野進出、元請の技術革新の進展に対応していくための情報化、情報の戦略活用という点に焦点をあて、業界としての「情報の収集・提供システム及び情報ネットワーク化」について、その必要性や企業の意向・情報二ーズ等に関する調査を行った。

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2.造船協カ業の現状

 

(1)深刻化する高齢化と労働力不足
当業界従業員の高齢化が進んでいることはこれまで度々報告されてきたが、平成5年に実施した協力工の年令構成に関する調査によると、50才代の比率がおよそ33%で最も多く次いで40才代28%と続いている。60才代と合わせて40才代以上の占める比率は70%にも達しておりその後も大きな変化はないと予想される。これまでの業界を熟練技術で支えてきた50才代が大量に退職年令を迎えていることは今後の造船協力業にとって深刻な問題である。

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