
講義1「会館技術担当者による照明の実際」
講師 稲田道則(日本照明家協会中国支部事務局次長)
会館の照明技術担当者には、管理技術者としての立場と、プランナー及びオペレーターとしての立場の2つの立場があります。前者の立場とは、ホールが貸館として利用され、照明技術者が主催者により手配されたとき、調光器の取扱や器材の貸出、設備についての説明などが主な仕事になり、照明設備の管理が主な業務になる場合です。また、後者の立場とは、貸館であっても比較的簡単な照明操作で十分できる、講演会や式典のようなもの、ホールの自主事業、カラオケや民謡、詩吟、バレエなど地元のサークルや同好会の範囲のもので、主催者の希望に応じ照明プランナーや照明オペレーターとして役割を果たす場合です。
ここでは後者の立場で、どうすれば限られた設備のなかで効果的な照明ができるかについて、あらかじめ仕込んでおいた基本的な照明を見ながら考えてみたいと思います。(実施説明)照明を舞台上に順に照らしながら説明していく…アッパーホリゾントライト、ローホリゾントライト、サスペンションライト、サイドスポットライト、フロントライト、シーリングライト、ボーダーライト他
照明の役割としては以下のような3つの要素があります。
a.見るための光 舞台上の人、物がある程度はっきり見えなければならない。
b.説明のための光 情景、心理等の描写。色の使い方。
c.形をつくる光 舞台上の光を当てる対象物に立体感を与える。造形物の存在をひかりによって強調あるいは補完する。見え方の工夫。
a.見るための光について基本的に客席から舞台は見えなければならないから、そのための明かりをつくるという作業が必要となります。
舞台上をうす明かりにしたとき、大きいホールであると視覚的な距離があり、後方の席だと照度が不十分で、対象物がよく見えないということがあります。客席の意識を集中させるという演出のため意識的に暗くすることはありますが、これは一般的に見える明かりとは言えないと考えられます。
(実施説明)舞台全体を明るくすると、確かに対象物は見えてきますが、対象物に対する印象が散漫になってきます。
トップからの明かりのみを中央のオブジェにあてると、前明かりがないため、ある程度は見えますが、子細にわたっては見えません。こういう場合は、シーリングピン(前あかり)をプラスすると見えたい物が見えるようになります。
b.説明のための光についてこれには写実的な説明と心理的な説明があります。
まず、写実的なものから表現します。それでは、1日の移り変わりを表現してみましょう。
(実施説明)まず、ブルーの明かりを使い、印象として夜の雰囲気を出しています。次
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