
「公共ホール舞台技術職員の基礎知識?T」講師 舞台技術家 末益泰輔
1 劇場運営の基本
劇場は、住民の福祉向上のために設置されている。そのことから、次の三つの点が特に重要である。
(1)安全であること
安全無事に公演を終了することが、第1の目的でなければならない。そのためには、掛け声のみでは駄目であり、その対策が必要である。利用者の立場に立って、安全面の点検・改善が必要。
(2)清潔で、快適であること
劇場だけでなく、職場全体の整理整頓も念頭において行う。清掃のことは業者に良いという考えではなく、職員もその場でできるだけのことをしておくという心掛けが必要。冷暖房の快適さでなく、客に対する対応も含めて快適さを考える。
(3)迅速であり、円滑であること
公共ホールの運営では、人的要素の役割が大きい。担当している仕事に習熟した上で積極的に仕事を進める。そのことが、結果として迅速で円滑な仕事につながる。
2 劇場とは−構造上の条件、劇場の形と分類
舞台は<舞い踊る場所>であり、舞台芸術の演じられる場である。その演じられるものを鑑賞するのが劇場であるから、舞台と劇場は切り離せない。
(1)見せる場(演じやすいこと)
?@ 劇場の生命とは、性能の良い設備が、安全かっ目的に適してバランスよく、見やすく聞きやすいことである。外観のみでは判断できない。
?A 見えない空間も非常に重要である。見える空間があまり大きくても無駄である。
?B オペラ・バレエ・演劇・クラシック音楽等舞台公演は種類によって、それぞれにふさわしい構造、設備、技術といったものがあり、なかには相反するものもある。そこで多目的ホールが出来たものと思われるが、それでは、中途半端で無目的ホールと批判されている。しかし、多目的ホールも、企画等の使い方を考えるか、ポータルタワー・ブリッジを付ける、また客席を仕切る等して構造に専用ホールの要素を取り入れることにより、ある程度観客の要望に応えることができる。
(2)見る場(よく見えること)
障害となるものがなく、客席からよく見聞きできることが重要。その距離として、演技者の細かな表情を識別することができる距離は10m〜15m。顔の表情や動作の識別は20m前後。大振りな表現の識別は30m〜35mを目安にしたら良い。
(3)聞かせる場(演じやすいこと)
客席の距離は、規模にもよるが最大30m位が良い。
(4)聞く場(よく聞こえること)
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