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「劇場とは」 ハコから劇場に

公立文化施設舞台技術者のソフト展開
講師 横浜市旭区民文化センター
サンハート館長 間瀬 勝一
1.文化はだれのもの
文化とは何か。私は考える時に、最切に戻って考えてみようと常々思っている。そうしないと、目先のことに惑わされてしまいそうになるので、ゼロから考え直してみる。例えば、「文化」を辞書で引いてみる。おもしろい訳語がいっぱい出ている。そこに立ち返って自分達が何をやっているかを考えると、なかなか興味深いものが出てくると思う。私達が文化というものを仕事としてやっていて、これからが旬の時期になるのではないだろうか。
今まで経済発展第一主義で進んできて、ここへ来て経済的な発展や技術的な発展は手詰まり状態になってきている。手詰まりから我々が次の世紀に向かって何をなすべきかと言うと、正に文化の時代になってきている。文化とは何かと言えば、要するに耕し、人と共生し何かを創っていくというようなことだろう。皆、芸能は神様が主役だった。例えぱ広場に神様を呼んで来て、その神様にお供物を上げて芸能をして、それを神様に見せていた。それを横からのぞいて見ていたのが観客である。そんなことで、芸能(まつり)が今我々が芸術文化と言っているものの発端の部分だと言う。まつりというのは、文化の基本の部分にある。まつりは何かと言うと、仲間というかグループから何らかの達成感が生まれる。そのグループとは、まず人が集うということから始まる。全員が集ってコミュニケーションできる場所を作って、それを提供していこうではないか。何となく集まって来られるような雰囲気を作っておいて、そこで皆さんでコミュニケーションをしていく。そういった場所を作っていくのが、地域の文化施設の仕事ではないだろうか。
私が仕事のべースにしている言葉がある。「芸術文化の日常化」、これが私のお題目みたいなものである。「芸術文化の日常化」をめざすということを簡単に言ってしまえば、市民の方々が自分達の余暇時間に家族揃って食事が終わったらコンサートに行こうとか、絵を見に行こうとか、家族という1つの小さい単位から村・町の単位まで、芸術文化を日常的に取り入れられるようなそういう社会環境を作っていきたいということだ。
2.地域施設の役割
地域施設はだれのためにあるのかを考えたい。行政の分期では、条例・規則とかにしばられているのではないか。例えば、うちは集会施設だからとか、文化施設だからこうだとか、施設の目的に書いてあるような言葉がよく出てくる。市民会館だと市中心のエリアだし、県民会館だと県全体をエリアとして考えるのが施設だと思う。私が今お世話になっているのが横浜市文化振興財団は、市から委託を受けて9施設の運営をしている。そのうち3施設が行政財産で、残りの施設は一般財産である。
いろいろ複雑に混じり合っている。条例・規則とか、規範の部分(ルール)にしばられることが多い、最初に立ち戻って考えてみると、条例・規則が最初にあって会館施設を作ったのではない。まず会館を利用する上でルールを作るのが普通ではないか。そのルールというのが条例・規則ではないのか。例えばゴルフなども、ルールは最初になかったはずだ。スコットランドの羊飼いが、ボールを木の枝で野兎の穴にポーンと落とした。おもしろがってやっているう

 

 

 

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