結論
1.離島在住女性中・高年者で変形性腰椎症及び変形性膝関節症に罹患し注射療法に通院する21例に対し第二中手骨骨量の測定を実施した。骨塩量積分値に関しては、21例中中13例61.9%が減少(測定範囲、軽度:2.00〜2.27mmA/liter、中・高度11.57〜1.95mmA/liter)、5例23.8%が正常範囲(2.39〜2.50mmA/liter)、3例14.3%が軽度ながら増加(2.64〜2.65mmA/liter)を示した。骨皮質幅指数に関しては、21例中5例23.8%が減少(0.374〜0.208)、8例38.9%が正常範囲(0.243〜0.365)、8例38.9%が増加(0.300〜0.408)を示した。
2.男性3例中、重度の症例は骨塩量積分値(1.57mm/Al)、骨皮質幅指数(0.213)と共に著しい減少を示した。骨塩量積分値に関しては2例共正常範囲(2.99〜3.06mm/A1)、骨皮質幅指数に関しては1例は軽度増加(0.411)、他は軽度減少(0.321)を示した。
3.骨塩量積分値と骨皮質幅指数との相関は、全27例中両値の平行減少が6例、平行増加が4例、著しい乖離が3例(A9,A14,F26)、一方で異状値他方で正常範囲が12例、共に正常範囲が2例認められた。理由の一つに骨皮質幅の基準値が決め難いことと個体による変動値に自動解析の感作が応答し切れないことが挙げられ、改良が求められる。
4.変形腰椎症及び変形性膝関節症で対症療法の男性対照群のうち顕著な骨塩量積分値及び骨皮質幅指数の減少が認められた症例は常習飲酒家でアルコール性骨減少症が主因と認識される。
5.骨格系疹痛・障害なく気管支喘息罹患男性で定期的にブレドニゾロン経口及び発作時ブレドニゾロン点滴療法を受けている症例は骨塩量積分値の減少を示したが、骨皮質幅指数は正常範囲であった。ブレドニン骨減少症が考えられる。
6.骨格系疹痛・障害なく抗てんかん薬長期服用中の男性の骨量積分値は減少を示したが、骨皮質幅指数は増加している。抗消化管潰瘍治療薬(H2拮抗薬)服用中の男性の骨塩量積分値及び骨皮質幅指数は共に軽度増加を示した。
7.中・高年に多発する変形性脊椎症や変形膝関節症の病因病理学に関しては未知の分野も多く、老人性骨粗髭症と共に基礎・臨床医学面において最新の方法論(DNA診断、MRIの活用等)による学際的な調査・研究を推進して予防対策を講ずる必要がある。
参考文献
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