症との同様の危険因子の存在も報告されている。しかしこうした報告の多くは欧米における中年以上を対象としたものであり、本邦での高齢者のみを対象としたものは少ない。そこで本研究では、60歳以上の高齢者を対象として、壁所見と各種危険因子との関係を検討した。
総頸動脈の硬化性病変を定量化する指標としては、Salonenらにより示された内中膜複合体の厚さを計測したり、ブラーク(部分的高エコーあるいは内腔への突出)の存在や数を計測する方法、またカラー・ドブラ法により血流をみる方法、血管壁の弾性を測定する方法等幾つか報告されているが、本検討では最も簡便で多数の報告がみられる壁厚を計測する方法を採用した。また測定部位については、高脂血症および糖尿病患者の頸動脈では壁肥厚は比較的均一に生じるとの報告に基づき、頸動脈分枝部より10m近位側とさらに10m近位側の計4ポイントを用いた。
頸動脈壁厚については、欧米での研究では収縮期血圧、脈圧、T-Chol,TG,LDL-Cとの関係が示され洲、また2年間の壁厚増加には加齢、LDL-C高値、喫煙、血小板凝集機能尤進、血清銅高値、セレン低値、ヘモグロビン高値が影響因子であるとの報告がみられる。一方頸動脈壁厚に関わる早期のアテローム動脈硬化出現にはLDL-C高値が、後期のアテローム血栓形成にはHDL-C低値が関与し、さらに喫煙は両時期に関与するとされている。
Rotterdam Elderly Studyでは、頸動脈壁厚は55歳以上の収縮期高血圧者に有意に大きいことが示され、さらに42〜62歳の東Fimish人を対象とした報告では平均壁厚は0.9mで、年齢とともに増加している。60歳以上を対象とした今回の検討では、年齢、男性、収縮期血圧、脈圧、Brinkman Index,LDL-C/HDL-Cが有意な正の相関を、HDL-Cが負の相関を示し、重回帰分析では年齢、喫煙歴、収縮期血圧、HDL-C、糖尿病の存在が有意な寄与因子であった。 こうした結果は、欧米での成績を支持する所見と考えられる。拡張期血圧との関係については、血圧上昇のみならず低下も動脈硬化と関係するとされるJ型曲線現象が存在することから頸動脈壁厚との間に相関はなしとの報告もみられるが、本検討ではこの現象はみられなかった。
動脈硬化性疾患と頸動脈壁厚との関係については、それを有する群では有意に大きく、あらゆる動脈における動脈硬化は病理学的には同様であり、頸動脈の超音波所見と冠動脈造影や頭部CT所見とは相関するという報告を支持するものであった。すなわち、頸動脈の超音波所見から他の血管における動脈硬化についてもある程度は推察可能と考えられる。
以上、60歳以上の高齢者においても加齢、喫煙歴、収縮期高血圧、HDL-C低値、糖尿病の存在は、頸動脈肥厚の危険因子であり、さらに動脈硬化性疾患との間にも有意な関係を認めたことは、高齢者においてもこうした危険因子に対する積極的治療の必要性を示唆するものである。
本論文の要旨は、第7回日本老年医学会四国地方会(平成8年2月17日、松山市)にて発表した。
文献
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