は受診者が降圧薬服用の有無に関わらず、収縮期血圧が160mHg以上、拡張期血圧が120mHg以上とした。血清代謝脂質異常はコレステロールが220mg/dl以上、中性脂肪が150mg/dl以上、HDLが40mg/dl以下とした。
統計学的検定はχ2乗検定を用い、p<0.05をもって有意差ありとした。
IV.結果
腹部大動脈瘤検診における超音波検査では2,514例中2,513例が観察可能で、1例のみ腸管内ガスのため腹部大動脈を描出できなかった。AAAは10例にみられ、いずれも男性で、年齢は64〜79歳(平均71歳)であった。その内訳は腹部大動脈瘤8例、総腸骨動脈瘤2例であった。発見率は全体の0.4%で、男性例の1.1%に相当した。腹部大動脈径は拡大症例が43例(男性32例、女性11例)にみられ、発見率は1.7%(男性3.4%、女性0.7%)であった。AS0は7例にみられ、男性6例、女性1例で、平均年齢は69〜82歳(平均71歳)であった。APIは0.5〜0.7、平均0.62であった。発見率は全体の0.3%に相当し、男性例、女性例のそれぞれ0.6%、0.1%に相当した(表1)。
動脈硬化の危険因子の検討では、非疾患群と比較し疾患群に喫煙の剖合が有意に(P<0.01)高かった。また、肥満の割合が高い傾向にあった。他の因子に特別な傾向はみられなかった。疾患群の中でAAA群とASO群を比較検討すると、AAA群において肥満の割含が、ASO群において脂質代謝異常の割合が高かった(表2)。
V.考察
欧米での剖検例におけるAAAの罹患率は男性1.9%、女性0.9%と報告されている。一方、本邦の剖検例におけるAAAの罹患率は0.25%と報告されており、欧米と比較しその頻度は比較的少ない。しかし、食生活の欧米化や高齢化社会に伴い今後は増加していくものと考えられる。
AAAの集団検診についての報告は欧米ではみられるが、本邦での報告は著者らの調べ得た限り非常に少ない。欧米での報告によると、AAA集団検診での発見率は4.3-9%となっている。今回の著者らの結果ではそれらと比較して発見率は低かった。その理由として、元来本邦でのAAA罹患率の低さもあるが、各々の報告での対象例の違いも考えられる。欧米の報告では、年齢や性別で対象者が限定されている。今回の検討では60歳以上を対象とし、女性でAAAを発見できなかった。しかしMcFarlaneによると、70歳以上女性における剖検例のAAAの罹患率は同年代の男性と同率と報告されている。それ故、今後も男性のみでなく女性に対しても本検診を続けるべきと考えている。また、高血圧、冠動脈疾患などのハイリスクグループに対象者を限定し、良好な検診率を得ている諸家の報告もみられる。今後本検診を実施していく上で、年齢やハイリスクグループに対象者を絞るなどして、効率面からも考慮するべきと考える。
AAAに対する検診方法としては、コスト、正確さ、安全性、速さ、非侵襲的な面を考慮すると超音波検査が最も優れている。諸家の報告をみても、本検査法による感受性及び特異性はほぼ100%となっている。今回の検討では、超音波検査で腹部大動脈を描出できなかったのは1例のみであった。腹壁が厚く、腸管ガスが多いためであった。
超音波検査におけるAAAの診断基準は腹部大動脈径が30〜40m以上とされ、さらに局所的な拡大があるものとされている。また、正常な腹部大動脈の近位側と比較して直径が1.5倍以上の局所的拡大を認めるものをAAAの診断基準としている報