IV.考察
日常臨床では、多くの情報が患者から得られ、しばしばその情報は互いに関連性を持つことがある。したがって、それらの関連性の程度を知ることは大切である。前述の通り、血圧、CTRとRV5はすべて様々な要因と関係している。しかし、それらは全て心血管系から得られている以上、各々に関連性がありうるはずである。
我々の研究結果では、血圧、CTRとRV5は多くの場合有意な単純相関を示し、中には相関係数0.4以上という比較的強い相関があった。また、主たる交絡因子と考えられた年齢とBMIを補正した後の偏相関でも、大多数において有意相関がみられた。
また、広く知られるように年齢とBMIは両性において血圧と止の相関があった。また以前報告されているように本研究においても年齢とBMIはCTRとも相関があった。年齢は女性においてのみRV5と正の有意相関があり、BMIは女性においてのみRV5と負の有意相関があった。男性でそうした結果がみられなかったことは、R波の振幅に影響を与える別の因子の存在を示唆する。しかしながら、それは本研究では不明であり、さらに調査を要する。
これまで、CTRとR波は心臓の検査における基本情報とされてきた。しかし、これらの測定値の臨床的な有用性に対して議論がおこっている。心臓の異常を診断する場合のCTR測定の限界が報告されており、R波の振幅についても同様である。しかしながら本研究で血圧、CTRとRV5で相関がみられたことは、これらの所見には一定の限界はあるものの心血管系の状態を反映する情報として共通な有用性を有すると考えられる。
CTRは以前から50%以下が正常とされ、左室の拡大によって増大するといわれてきた。今回の研究では女性におけるCTRの平均値は50%を越え、男性においては平均+0.5SDは丁度50%となっている。ニコルらはアジア人を含む3民族においてCTRを我々が用いたものと同じ方法によって検討している。それによると、アジア人のCTRの中央値は46%であった。今回の研究から中央値を算定すると男性の中央値は47.4%、女性は50.6%であった。
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