6)年別歯科訪問診療の延回数(図-13)
1996年についていうと、68人の患者に対し延べ664回の歯科訪問診療をした。
各年別の延回数は初診年別人数(図-12)の棒グラフときれいに重なる。
7)通院が困難な疾患及び理由(図-14)
脳血管疾患の多いことがよくわかる。39人と全体の39%を占めている。老衰の18人も注目に価する。この18人の初診時の平均年齢は83.3才であった。人数の内訳は老人ホーム入所老が16人で、あとの2人も老健施設に入所している人である。
いずれも、私がそれぞれの施設に歯科訪問診療をしている姿を見たり、人づてに聞いて、ここで診てもらえるなら、受診したいといってくれた人たちである。心身の衰えのために、自分を取り巻く様々な理由から、歯科を受診することをなかばあきらめていた人たちである。思うに、在宅の虚弱老人もこのような歯科訪問診療のあることを知り、家族等の理解が得られるならば、彼等の多くは歯科の診療を受けたいと思うのではないだろうか。
町の広報誌に今まで何度も「歯科訪問診療」のお知らせを掲載しているが、町民の多くは広報誌そのものを読まないのか、「歯科訪問診療」が行われていることを知っている人は少ないように思われる。まして、当事者である寝たきり老人は広報誌の存在すら知らないと思われるので、自宅で歯の治療が受けられるなどと、夢にも思っていないことが想像できる。
歯科訪問診療の宣伝を兼ねて、現在、通院している患者さんに「体調が悪くなり通院が困難になったらいつでも歯科の往診をしますから、遠慮なく話して下さい」と話しをすると、患者さんの反応は次の三つのどれかであった。一つは「その時は宣しくお願いします。」であった。二つ目は「自分はそんな状態にはなりたくないし、考えてみたくもない。」であった。三つ目は「そうなるかもしれないが、わざわぎ往診してもらうのは申し訳ないです。」であった。(答えで多かったのは三つ目の「わざわざ往診してもらうのは申し訳ない」であった。)
そんなことから、最良の方法は在宅寝たきり老人を訪問する保健婦等のチームに、歯科衛生士も加わって訪問し、口腔ケアをするとともに、歯科治療の必要な人にはそれを熱心に勧めることである。
1996年4月1日現在の資料によると、寺泊町に歯科治療及び口腔ケアを必要としているかもしれない「在宅寝たきり老人(65才以上)」は80人いた。また、現在は寝たきりでなくとも何かの拍子で明日にでも寝たきりになりそうな虚弱老人も相当数いるものと思われる。私たちの方から、困っている人の所に、もっと出かけて行かなければならないと痛感している。
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