多いが、土日は休診となっており、本当に困ったときに頼りになるような地域に密着した医療機関とは言い難いかもしれない。また当院は自治医大生の派遣が始まった平成元年4月より3年毎に勤務医師が交代となっており診療機関として地域に信用を得るのに各勤務者の努力が必要となる。医師交代の時期は受診患者の減少傾向があり、年度別診療数の変化の原因の一つと考えられる。また月別の紹介数を見た場合で8,9,10月に多くなっているのは住民健診や各癌検診の精査の依頼が多くなることと関連すると考えられるが、5,6月の増加は自らの経験からいえば赴任当初は経験の無い診療科の患者をとりあえず一度専門医に紹介するため紹介数が多くなったのではないかと考えられる。卒後初期研修にて多科ローテーションを行ったとしても全科をローテーションすることは不可能であり、診療所勤務に多く見る、皮膚科、眼科、整形外科疾患などは研修を行わなかったため自信がなく、患者が他院を受診可能であればなるべく紹介し、紹介状の返事により、また戻ってきた患者自身より治療法を学んだことも多い。そういう点でも患者には頼りなく見え、受診者の減少をもたらすのではないかと考えられる。
ではその紹介先のほとんどを占める県立久慈病院の後方病院としての特性を考えてみる。前記のように久慈医療圏でただ1つの二次救急病院であるため各診療科とも24時間受け入れが可能である。また全国自治体病院協議会の上記調査では診療所からの紹介先病院として、近隣の病院、専門医のいる医療機関、都道府県立の総合病院、僻地中核病院、などがあげられているが、県立久慈病院はそれらにあてはまる。したがって、弱点として三次医療機関である盛岡市の県高次救急センターへは救急車で2時間かかるため時に搬送にリスクを負うという点もあるが急性疾患、慢性疾患ともに大部分は対応可能である。以上の状況から当地域住民としては当院を経て、あるいは直接受診しその時点で最善の医療を受けられる体制の中にあるのではないかと考えられる。
以上のように当診療所における他の医療機関との連携を考察すると、主に県立久慈病院に依存しており、今後もその状態は続くと考えられる。しかし最近取り上げられているような在宅医療を望む患者が増えてくれば県立久慈病院からの逆紹介により、地域住民が自宅で治療を受けることになる。その場合、診療所、市町村白体の役割が大きくなってくることは確実でこれまでのように土日は休診で急患は久慈病院頼りと言う体制では在宅医療は難しい。当村でも将来は在宅医療センターを設置する予定もあり、それを実践するには夜間や不在時の対応を円滑にするため久慈病院だけでなく近隣の診療所との連携も確かなものとしてお互いカバーしあえるような関係を構築していかなくければならないと考えられる。
文献
1)全国自治体病院協議会:中小自治体病院(200床未満)及び自治体立診療所における他の医療機関との連携・在宅医療等に関する実態調査報告:へき地医療の現状と対策:第15編、1995.
(普代村国保診療所 〒028-83 岩手県下閉伊郡普代村10-4-1)
前ページ 目次へ 次ページ
|
|