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うなものであろうか? 本稿において筆者は、これまでの検討を踏まえ。愛媛県内7町村に設置されているへき地診療所の診療圏に居住する高齢者を対象として、社会的活動能力の実態を調査し、その関連要因についても検討を加えたので報告する。

対象と方法

調査は、悉皆調査と一般調査に分けて実施された。悉皆調査は、愛媛県広見町下大野地区(後述の広見町三島診療所の診療圏内の一地区)在住の満60歳以上の高齢者全員を対象として、1995年10月の住民健康実態調査時に実施された。一般調査は、県内7町村に設置されている8箇所のへき地診療所(広見町愛治、同三島、松野町目黒、明浜町狩江、三崎町二名津、河辺村、中島町津和地、新宮村、の各診療所)の診療圏に居住する満60歳以上の高齢者のうち、以下の各条件を一項目以上満たし、調査への協力を承諾したものを対象とした。すなわち、(1)1995年6月から10月までの間に各診療所を受診したもの、(2)同期間内に各地区で行われた住民基本検診を受けたもの、(3)同期間内に各地区で実施された住民訪問健康診査を受けたもの、の各項である。

調査は、記名式調査票による自記式アンケートにより行われた。調査票の配布と回収は、悉皆調査においては、地区担当保健婦が行い、一般調査のうち診療所受診者では担当看護婦、住民基本検診受診者では地区健康推進員あるいは担当保健婦、訪問健康診査では担当保健婦が行った。調査票への記入は原則として被調査者自身により行われたが、一部の記入困難な被調査者に対しては対面聞き取り調査で補完し、その旨を調査票に記載した。

調査票は、被調査者の判読が容易なように、A3版の上質紙の表裏二面に、調査事項を大型の活字で印刷したものを用いた。調査票の第一面には、調査日、調査票記入者のほか、被調査者の属性を問う項日を配した。属性事項は、住所、氏名、年齢、配偶者の有無、および同居人の状況とした。同居人の状況は。終日一人暮らし(独居)、同居人はいるが、仕事等に出かけるため昼間は一人になる(夜間同居)、昼も夜も家族がいる(終日同居)の3分類とした。第二面には社会生活機能の自力遂行の可否を問う項日を配し(表1)。回答は、「はい」「いいえ」の2段階とした。

さらに、自記式調査の信頼性を検討する目的で。1995年7月〜9月の間に明浜町狩江地区において行われた住民基本検診事後指導の際に、自記式アンケートと同様の項目を含む調査票を用いて、面接聞き取り調査を行った。

調査票の内容は、プログラムFilemakerPro2.1TMを用いてデータべース化し、結果の解析にはプログラムパッケージSPSSを使用した。


結 果

1.概要

回収調査票の総数は1872、有効回答総数は1868(悉皆分:218、一般分:1650)であった。一般調査における有効回答数の、対象地区内60歳以上総人口に占める割合は、51.2%であった。 各調査群における被調査者の属性の構成割合の差を検討する目的で、一般調査群を構成する各診療圏毎の性。年齢の差について検討したが、各診療圏の間で有意差を認めず(性:x2=10.33,NS;年齢:x2=42.83,NS)、続いて一般調査群と悉皆調査群とについても同様な検討を加えたが、やはり両群間に有意差は認めなかった(性:x2=2.96,NS;年齢:x2=5,08,NS)。各調査群における属性事項の構成割合を表2に示す。

次に、社会生活機能調査項目の回答状況について検討した。各項目毎の通過卒(1〜29の各項目に「はい」、30に「いいえ」と答えたものの割合)は。64.2〜98.2%の間に分布し、適度のバラツキを示していた。また、各項目毎の無答率(設問に対する回答の記載のないものの割合)は、0.1〜0.9%の間に分布し、いずれもきわめて低率であった。さらに。調査項目のうち、1〜29の各項目に「はい」、30に「いいえ」と答えたものに1点、1〜29に「いいえ」、30に「はい」と答えたものに0点を与え、被調査者毎の合計得点を算出したところ、平均得点は、一般調査群男性:27.2、同女性:26.8、悉皆調査群男性:26.5、同女性27.8であり、各群間で有意差を認めなかった(F=3.12,NS)。以上の結果より、後述する因子構造の検討にあたっては、両群を一括して解析を加えた。

2.社会生活機能調査項目の内的構造

地域在住高齢者の日常生活のありようを規定する

 

 

 

 

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