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研究と報告

すべてを死に結びつけ不安を表出した終末期患者への関わりを考える*1
武井淳子*2 山崎真由美*2 佐々木幸子*2
はじめに
死を前にした患者は、常に病気の進行に対する不安を抱いている。本症例のSさんは、入院後痛みが緩和され行動範囲も拡大したが、すべてを死に結びつけ死への不安をもち続けていた。しかし、他患との出会いや家族のサポートを受け平穏な気持ちで死を迎えることができたのでここに報告する。
患者紹介
Sさん、54歳、女性、卵巣癌、肝転移
家族構成;夫(55歳)、長女(25歳)、次女(22歳)の四人暮し
性格;内向的・神経質
卵巣摘出術を受け、1か月を経過したころ軽快退院できると思っていたが、痛みなどの症状出現、さらに主治医より病名・予後1か月と告知された。Sさんは衝撃を受け、自らホスピスを希望し転院となった。
経過
入院時の表情は暗く、医療者と目を合わせようとしなかった。右側腹部の痛みが強くインダシンカプセル100mgで除痛を図ったが効果がなく苦痛緩和されないことにショックを受けていた。2日目にロキソニン240mgに変更し、約1週間後に症状は緩和された。同室者とともに食堂へ行ったり、散歩したりとADLが拡大されていったが、表情に変化はなかった。症状コントロールがついたため医療者は、外出・外泊を勧めていった。しかし、Sさんは家に帰ると一人になることや痛みへの不安もあり、「死が近いからそんなに外泊を勧めるの」などを言葉にし、出かけようとはしなかった。そこで院内で趣味のレザークラフトを勧めたが再び「死が近いからいわれているみたい」との言葉が聴かれた。それからは外泊や趣味の話は避け、Sさんの不安な気持ちを傾聴し受け止めた。
その後、医師との話の中で発病前の生活が現在も可能であることを伝えられ、Sさんから前向きな言動が聞かれるようになった。長女と家族室で

 

。?tudy on How to Deal wirh a Terminal Patient Who Showed Anxiety Connecting Everything with Death
*2ピースハウス病院
第11回日本がん看護学会学術集会、1997年2月

 

 

 

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