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研究と報告

終末期における患者の意思とケアの選択

−治療への期待を持ち続けた患者への援助

瀬戸ひとみ*2長澤裕子*2 松島たつ子*2
西立野研二*2 日野原重明*2

 

はじめに
ピースハウスは全病床数22の完全独立型ホスピスである。ホスピスでは、治療の効果が期待できない終末期患者に痛みなどの症状を緩和することが入院目的の一つとしてあげられるが、なかには、できる限り薬を使わないようにと痛みを我慢する患者もいる。
今回、さまざまな民間療法を試み、死の直前まで自分の強い意志でモルヒネを拒否し続けたケースを体験したので、その関わりを振り返り報告したい。
患者紹介
Y氏、男性、38歳、胃癌、狭窄型スキルス、高校数学教諭。妻と2か月の子供との3人家族。子供の誕生と発病が同時期のため、自宅で3人で暮らしたのは1日だけであった。1995年9月に近医にて胃癌と診断されたが、実家である北海道での治療を希望し転院。バイパス手術予定であったが、患者の母親と妻の折り合いが悪く手術直前に妻が神奈川に帰り、中止となった。その後、兄の勧めで東洋医学を開始し、妻、兄と相談し、同年11月当院へ転院となった。妻は運転免許を持っておらず、Y氏の友人がほとんど毎日妻の送迎を行い、外泊や外来通院時もサポートしていた。入院時の病識は、スキルス、あと1〜2か月の命、西洋医学では治らない、民間療法に期待していると話していた。
入院中の経過
入院から退院決意までの約2か月間を1期、在宅療養を行っていた1か月間を2期、再入院から永眠されるまでの2日間を3期と分けて報告する。
1.入院から退院決意までの時期
入院時より多種の民間療法および東洋医学を試み、「薬草茶を飲んでいれば、多少でも腸に通じる」と、1日2〜3l飲水しては経鼻カテーテルでドレナージしていた。飲水により出血が見られ、一時、飲水制限を勧めたが、民間療法への期待と、食に対する欲求が強く、Y氏と医師の話し合いを持った。そして医師に対して、IVHと、今

 

*1Patient's Wish and Choice of Care in the Terminal Stage
−Support for the Patient Who was Anxious to Mave Positive Treatment
*2ピースハウス病院
第20回死の臨床研究会年次大会、1996年11月

 

 

 

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