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1996年度の研究業績を第17巻の「研究業績年報」としてまとめました。当財団の職員および関係者による研究のレポートと、国際学会に出席した2つの学会報告が収載されております。
今号で特徴的なことは、当財団が1993年9月に設立したホスピス「ピースハウス」での研究活動が、満3年を経て軌道に乗り始めたため、その報告が増えてきたということです。
1967年に英国に誕生したホスピスは、その精神と相まって急速に各国に広がりました。日本においても、1980年代後半から各地に緩和ケア施設が開設され、1997年6月現在32の緩和ケア承認施設が生まれましたが、いずれも緩和ケア病棟として病院に付設しているもので、当財団のピースハウスが唯一独立型の施設として存在するものです。病院に付設したものと、独立タイプのものと、いずれもホスピスケアを実施するという上での共通基盤は有していますが、付設であるからこそ満たされること、あるいは独立型であってこその利点など、利用者の側に立ったQOLが検討され、日本という文化と風土によりふさわしい終末期の医療が訴求されていかなければなりません。そこにおいては、ピースハウスでなされる研究は、わが国のホスピス医療の発展に大いに貢献できるものと思います。
また、「生活習慣と循環器疾患のリスク因子に関する研究」は、今回は都市と農漁村地域とに居住する婦人の比較検討です。この研究は過去のWHOの援助によって基礎的研究がなされたものでもあり、得られた知見をぜひ日本の医療界で活用いただきたいと考えます。
国際健診学会(カナダ)および太平洋地域がん学会(マレーシア)への参加報告は、それぞれの領域における世界の趨勢を知るという上で参考にしていただければ幸いです。
いよいよ当財団も設立以来四半世紀を迎えるまでに至りました。今秋には訪問看護ステーションも開設いたします。これから取り組むべき研究の方向が当財団の展開する事業にふさわしく、より重層かつ広範なものとなるよう願ってやみません。
1997年9月
理事長 日野原 重明

 

 

 

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