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血圧がいままでよりも高くなってきたとか、手が震えるとかいうときには低換気による血中の炭酸ガス蓄積が強くなり、CO2ナルコーシスになってきたのではないかと疑うように患者にも家族にも注意しておきます。
さて、酸素吸入によってCO2ナルコーシスはなぜ誘発されるのでしょうか。
従来からいわれている説明は、二酸化炭素の蓄積によって呼吸中枢は刺激され、換気が保たれていた人が、長期の二酸化炭素蓄積に慣れてしまうとCO2で呼吸中枢が刺激されにくくなります。そのような人では低酸素の状態、すなわち酸素不足が呼吸中枢を刺激して換気量を保つわけです。ところが酸素吸入によって低酸素による刺激もなくなってしまうと換気量は増しません。そのため二酸化炭素蓄積はさらに増してしまうのです。CO2が血中に増えてもそれが刺激とならず、むしろだんだん蓄積して、アシドーシス(酸血症)による麻酔現象を起こしてしまいます。それがCO2ナルコーシスです。ですから、先ほど話したように眠りやすくなる、あるいは汗ばみやすい、血圧が上がり気味という状態になり、それをたんたんと過ぎてきますと震え(振顫=しんせん)が生じます。これは手を手背部に曲げてみますと羽ばたき様の痙撃(羽ばたき振顫)をすることで、こういうことを観察しなければなりません。
いずれにしても、少し眠気が強い、汗ばむ、どうも様子がおかしいというときには、酸素流量がいままで0.5でいっていたのに、それより多くなっているかどうかのチェックをし、家族からの報告をもらうように指導しておくのはもちろんですが、医師への連絡も不可欠です。

 

 

 

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