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先ほどのご挨拶にもございましたように、この財団は昨年9月に発足いたしまして、ちょうど1年経ったところでございます。先ほどのご紹介のなかにありましたように、すでにシルクロード関係の観光促進調査で二度にわたる調査事業を行っております。それから、昨年はWTOの「アジア太平洋観光ウィーク」を開催しております。つい先週のことですが、さらに神戸で「日本とカナダ間の官民の観光定期協議」というものが開催されましたが、これに合わせまして都市観光のシンポジウムを開催されたところでございます。そして、今回はこの国際観光交流促進のシンポジウムということで、この財団は着々と地歩を固めているところでございます。
この国際観光についてでございますが、手元の最近の数字によりますと、すでに世界で国境を越えて観光をするお客の数が5億6,000万人であるということでございます。その消費額を見てみましても、だいたい世界全体のGDPの1割になっているというような数字も開いております。また、日本における数字ですが、日本から外国へ行く観光客の数というのは、昭和39年にちょうど観光目的の海外渡航が自由化されたわけですが、当時12〜13万人という数でしたから、現在、去年で1,500万人になっておりますので、この30年間のあいだに百数十倍の伸びを示しているということでございます。
こうした観光産業というのは、もうすでに基幹産業といえるかとも思いますが、21世紀にむけての基幹産業、日本国内でも、さらにまた国際的にも観光産業というのは非常に重要な産業になっているという認識をしているわけです。しかしながら観光というのは、単に観光産業の発展ということではなくて、観光を通じて諸外国の方々がお互いの文化を見て、生活を見て国際的な理解を大いに増進させるということです。そういう意味でも、運輸省としても国際観光交流をぜひ進めていきたいという希望をもっているわけです。先ほど1,500万人といいましたが、今年はさらに伸びて約1,700万人が日本から外国へ出るのではないかというような予測も出ております。これに比べまして、外国から日本へ来る外国人観光客につきましては、少し多いときで350万人、去年では330何万人ということです。大きなインパランスがあるわけです。これは観光交流という意味からすると非常に問題ではないかと運輸省としても考えている次第です。
ある国際的な機関が、日本のイメージがどんなものかと調査した結果がございます。それによりますと、外国人が日本人に対してもっているイメージというのは、勤勉であるとか、よく働くとかですが、日本人は親切で好感がもてる人間で、日本はそういう国であるというイメージが、日本へ来る前は6位であったのが、来てみたら1位になるということで、実際に日本に来ていただくということが非常に重要ではないかという思いをますます深めた次第でございます口そういう観点にたちまして、運輸省では「ウェルカムプラン21」と名づけた政策を進めているところです。出ていく日本人客に対して、来られる外国人客があまりに少ないということで、ぜひこれを10年間で倍増して350万人を700万人ぐらいにもっていけないだろうかと、いろいろな財政、あるいは税制措置を講じて、官民一体となって現在このプランを進めようとしております。
国際観光振興会では海外に対して、日本というのはもっといいところがあるのだとか、日本のいいイメージについても積極的に宣伝していただいたり、また日本各地の観光要素についても積極的にどんどん売り込んでいただいています。まず外国人に来てもらうこと、それによって直接的には地域の経済に対する効果もありますが、やはり国際理解を進めてお互いにどういう文化的バックグラウンドがあって、どういうことを考える人間であるかということをわかったうえで、いろいろな文化摩擦や経済摩擦を最小限にしていきたいということが、政府としての大きな目的です。今回のシンポジウムは、旅行を通して国際観光交流を考えていくということで、まさに運輸省が今、一大テーマとして進めている「ウェルカムプラン21」にも沿った、非常にいいシンポジウムの議題です。白幡教授の基調講演をはじめとしまして、阿部助教授がコーディネーターのパネルディスカッションを行うわけですが、運輸省としても、大いにこのシンポジウムに期待するところでございます。このシンポジウムが新たな国際交流の今後の増進のために、大いに意義のあるシンポジウムであることを祈念しまして、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。

 

 

 

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