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さつみたいなものを御説明するのが一番かと思います。
 私は、先ほど第3回松本清張賞受賞者ということで御紹介にあずかり、リーフレットにもそのように記載されていると思いますけれども、「森福 都」という名前をお聞きになっても、「だれ、それ」みたいな方がほとんどではないかと思います。もちろん、社会派推理作家の故松本清張氏をご存じない方はいらっしゃらないと思いますけれども、私自身は、そのお名前に関して創設されました歴史小説または推理小説の分野に与えられる文学賞の今年度の受賞者でありまして、それでもう本当に作家というにはおこがましいほど駆け出し中の駆け出しでございます。ですから、このたび、県の県民生活課の方からふるさとについてお話をという御依頼がありましたときに、本当にまだまだ未熟者で駆け出しですからということで一度はお断りしたぐらいなんですけれども、最終的にお引き受けすることになりましたのは、もう本当に一にも二にも私はこのふるさと山口が好きだ、もう好きで好きで本当にこの気持ちはもう誰にも負けないと、そう思いましたので、本当にこの場に立たせていただいているわけです。
 私は、3年ほど前、東京の港区でとある小さな商社に勤めておりまして、この商社っていうのが異常に平均年齢の高い会社だったんですけれども、私の所属していた部署っていうのも私が一番下っぱっていうぐらいにみんな年齢が高かったんですが、ただ、和気あいあいとした職場でしたので、アフターファイブなんかにはカラオケなんかにもよく行きました。で、そういうときに歌う順番が回ってきて、アップテンポのノリのいい曲なんかを歌ったりしますと、どうも初老のおじさまとかおばさまなんかが座が白けてしまうということがだんだんわかってきましたので、かといって、私に美空ひばりとか、藤山一郎とか、そういう歌は歌えないし困ったなあと思っていたところ、ある日じゃあ童謡ならいいだろうと思って、「ふるさと」っていう童謡を歌ったんですけれども、例の「うさぎおいしかのやま……」という歌なんですけれども、最初は苦し紛れで歌ってたんですけれども、本当に歌っているうちにもう涙が出てきまして、もう止まらなくなったという思い出があります。私は本当にこれほどふるさとに対して熱い思いを抱いているんだなあっていうことを、本当に思いがけず自覚してしまった夜でした。
 とはいいましても、私はこれまで普通に市民生活、ごく普通の市民生活を営んできただけですので、いきなり大上段に構えて、ふるさとづくりとはとか、ふるさとの環境間題とはっていうことについて、なかなかそういう大きな意見というのは述べられないというふうに思っています。
 ですから今日は、ここで山口県の大島郡で生まれて、高校を卒業するまでその大島で過ごして、その後、広島、京都、横浜、東京っていうふうな、それぞれ特色のある土地で過ごして来た一人の人間が、ふるさとを懐かしみつつ、かつ、ふるさとの環境

 

 

 

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