日本財団 図書館


ることを意味し、福祉、医療、保健などの問題をますます深刻化させることになる。そして、こういった要介護高齢者の介護をするのは約50%が60歳以上の高齢者であるという調査結果もでており(平成4年国民生活基礎調査)、高齢者が高齢者を介護するという傾向が強まりつつある。しかも、その介護者の86%は女性であり、介護の負担が女性に重くのしかかってくることになる。特に、現在のまま、合計特殊出生率が低下を続けると、いわゆる「長男長女社会」が出現し、長男と長女の結婚によるカップルの扶養親族は合計4人ということになり、「大変な時代」を迎えることとなる。ここでは、これ以上、この問題に深入りする紙面もないので問題の指摘のみにとどめるが、いずれにせよ、この高齢化、少子化問題はわが国の経済・社会体制の根幹を揺さぶる最も深刻な問題であり、国をあげての早急な取り組みが喫緊の課題であると言えよう。
そういった状況を認識しつつ、本市(地方公共団体)としては、市民ひとりひとりが将来に向かって安心して住み続けられる名古屋を実現するため、努力しているところであり、そのためには必要な時に必要なサービスが供給できるシステムの構築をめざし、財源問題はじめ様々な制約の中で必死に取り組んでいるというのが現状である。
次に、本市における高齢福祉の取り組みについてその沿革をたどってみたい。
(2)本市における取り組み
本市においては庁内に「高齢化対策連絡会議」を設置し、高齢化社会への対応を市政の重要課題として検討を重ね、昭和60年10月、今後の高齢化社会を展望した市政運営の基本理念と施策の方向性を明らかにした「名古屋市高齢化対策長期指針一なごやかライフ80」を策定、公表した。
指針では「人間の尊厳の確保」を基本理念として、その実現のために次の四つを施策の原則として示している。
?高齢期における主体的、積極的生き方の実現
?世代間相互の理解と交流
?地域連帯意識の醸成
?市民の主体性、創造性の尊重
さらに、昭和63年10月には長期指針の理念の実現をめざし、施策の総合的、効果的な推進を図る目的で「なごやかライフ推進プラン」を策定した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION