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なども行っていくことが必要になるものと考えられる。元気な高齢者の中には、引退後も自己の能力を活用していきたいという欲求を持つ者も多く、行政としては、こうしたニーズに応えるべく対策を講ずる必要があると考えられる。
高齢者の社会参加促進のためには、生きがいづくり対策や就労対策のほか、高齢者の心理面のバリアについても考慮する必要があると考えられる。日本は健常者中心の社会であり、高齢者や障害者などの視点や配慮が足りないという指摘がなされており、障害のある者に対する意識が低いことが高齢者が福祉サービスを利用したり社会参加を行っていくうえでの心理的なバリアになっているのではないかと考えられる。特に、元気な高齢者や引退前までは高い地位に就いていた高齢者は、自分が老人扱いされることを嫌う場合が多く、こうした高齢者は地域の他の高齢者とうまく交流ができない場合がある。行政は、こうした老人のプライドにも配慮した支援策を考えていくとともに、心理的なバリアを取り除くため、高齢者以外の市民に対しても高齢者施策に対する理解を深めてもらうよう広報・啓発や世代間交流の促進などを行っていくことが必要であると考えられる。このため、後述する生涯学習活動や余暇活動、能力活用のための施策を考えていく際には、それぞれの高齢者の多様なニーズにあったものを複数用意していくことが必要となるであろう。
 
(2)社会参加の支援と生きがい対策
高齢化の進展により様々な問題が顕在化してきているが、高齢化が引き起こすものはデメリットばかりとは限らない。平均寿命の伸びは、仕事や家事・育児といった拘束時間が少なくなる退職後や育児からの解放後の時間を増大させ、こうした時間は、個人の趣味や娯楽、休養などに当てる自由時間となる。この時間を有意義に活用することができるようにすることが、高齢者の活力を生み、ゆとりのある生活を形成していくための一つのポイントになるものと考えられよう。
この点、大都市地域においては、各種の施設整備が進んでおり、様々な能力や興味、関心を持つ人々が集積していることから、同じ趣味や関心を持つ人たちのサークル活動や文化活動などが盛んである。このため、高齢者が自分の関心にあった活動をする場合には比較的便利であるといえる。しかし、その一方で、地域コミュニティの形骸化や独居老人世帯の増加などにより、地方に比べると、高齢者が社会的な地位や役割を喪失し、生きがいを失ってしまう場合も多い。このため、行政は、高齢者が生きがいを持ち続けることができるよう、高齢者のニーズに合わせ、生涯学習活動や余暇活動を行う場の提供や高齢者の趣味・娯楽活動に関する情報を提供していくことが求められていると考えられる。

 

 

 

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