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ては、大都市地域は、農村部などよりも高齢化率は低くても高齢者の絶対数は多いため、今後も高齢者がさらに増加することを考えると、農村部と同様、大都市地域においても深刻な高齢者間題があることがわかる。大都市における行政は、今後の高齢化社会に向けて福祉マンパワーの確保や様々な福祉施設の整備などにおいて、さらに努力していく必要があると考えられる。
 
(3)福祉に対する意識改革
今後の高齢化社会においては、高齢者自身や家族の努力によるほか、地域、民間、地方公共団体、国などによる重層的な支援システムを形成していくことが必要でる。高齢者は、こうしたシステムのもと、高齢者自身が自立した個人として健康の維持増進に努めるとともに、家族の支援を受けながら、地域や地方公共団体などが用意した様々な福祉メニューを利用し、さらに足りない部分は自己負担も行いながら民間営利部門などが提供する福祉サービスを受けていくということになろう。いずれにしても、まずは高齢者自身が自らの生きがいを見つけ、健康の維持増進に努めるとともに、行政はそうした意識をはぐくみ、個人の意思を尊重したうえで必要な福祉サービスを提供するしていくことが求められている。
福祉サービスを効果的に実施していくためには、行政はサービスを必要としている高齢者やその家族に各種のサービスの内容などを広報し普及させ、利用してもらうことが必要である。福祉サービスの利用促進を阻んでいる理由としては、サービスの存在自体を知らない人が多いこと、周囲の目が気になり利用に踏み切れないなど心理的なバリアがあることなどがある。
このうちサービスの内容については、高齢者福祉の重要性の認識が深まってきたこともあり、その概要についてはある程度の知識がある人も多いが、サービスの内容がきめ細かくなればなるほど逆に利用者にとってはわかりにくいものとなっている場合がある。特に、介護者を抱える家族にとっては、日々の介護に追われ、サービス内容に精通する余裕がない場合もあると考えられることから、それぞれの状態に合わせた最も適切なサービスとしてどのようなものがあるのか的確にアドバイスできるよう相談窓口を設置し、個別にケアマネージメントを行っていくことが必要になろう。
心理的なバリアについては、サービスを要する高齢者や介護者に対してのみ施策の内容や利用をアピールするのではなく、家庭や地域の人々など周囲の人々に対し高齢者施策に関するマイナスイメージを払拭するための啓発を行い、高齢者施策に対する理解を求めていくことも必要になると考えられる。
また、自分や自分の身の回りの高齢者が介護を必要とする状況に突然直面したときに、当惑し、立ち往生してしまうことのないよう、現時点では介護サービスの提供や家族に対する介護の実施が必要のない人たちに対しても、あらかじめ福祉サービスの必要性や効果、内容などについて情報を提供する必要もあると考えられる。

 

 

 

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