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第6章 環境影響評価手続における地方公共団体の役割
 
1.国の制度における地方公共団体の役割
 
環境影響評価法案の今国会への提出が予想されるが、法案の内容は、平成9年2月10日の中環審答申に沿ったものになると予想される。そこで、以下においては、中環審答申を参照しながら、環境影響評価法の環境影響評価手続における地方公共団体の役割について検討することにする。環境影響評価法の環境影響評価手続において、地方公共団体は以下のような役割を期待されよう。
第一に、関係都道府県及び関係市町村は、事業者の求めに応じ、準備書又は評価書作成に必要と認める範囲において、資料の提供について協力することが期待される。これは、関係都道府県及び関係市町村は、地域の環境に関する広範な情報を有しており、地域の自然的社会的特性に応じた環境影響評価を実施するためには、かかる情報の提供が重要であるからである。なお、中環審答申を受けて、環境影響評価法において、新たにスコーピングの手続が導入され、スクリーニングの手続も一般的に整備されることになると予想されるが、これらの段階においても、地域特性の配慮が重要であるので、関係地方公共団体の意見聴取が望まれよう。
第二に、関係都道府県及び関係市町村は、準備書及び評価書の送付を事業者から受けるとともに、これらを公告、縦覧するに際して事業者から協力を求められた場合、可能な範囲で最大限の協力することが期待される。これは、地方公共団体が公報等公告に適した手段を有し、縦覧についても、地方公共団体が庁舎等縦覧に適した場所を有しているからである。また、同様の理由から、説明会の開催等についての協力も期待されよう。
第三に、関係地方公共団体は、地域の環境保全に関する事務を所掌する立場から、準備書等に意見を述べることが期待される。現行の閣議アセスでは、関係都道府県知事は、関係市町村長の意見を聴いた上で、準備書についての環境保全上の見地からの意見を述べるよう求められた場合に協力することとされている。地域の環境保全に関する事務を所掌する関係都道府県知事及び関係市町村長の意見は、事業者が手続を進める過程において公害の防止等の配慮を行う上できわめて重要なものであるからである。
閣議アセスの対象事業が、大規模で広域にわたること、関係都道府県知事は地域の環境保全の要であり、関係市町村長の意見を踏まえた広域的見地からの意見が期待できること等から、関係都道府県知事が事業者に対して意見を述べることとされているが、環境影響評価法においても、大規模で環境に著しい影響を及ぼすものが対象とされることになると思われるので、同様の理由から、事業者に対して直接に意見を述べるのは、関係都道府県知事ということになろう。
第四に、環境影響評価法においては、環境影響評価後の調査等が義務づけられることになると予想されるが、地方公共団体も、環境モニタリング等を可能な限り行い、その結果を提供するなど、事後のフォローアップの面でも、できる限りの協力をすることが望ましい。
 
2.地方公共団体の行う事務の性格
 
環境影響評価において、1でみたような地方公共団体の事務、とりわけ、準備書等に対

 

 

 

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