
4.2 船舶業界のPL対策(PLP対策及びPLD対策)における義務・責任分担のあり方について
4.2.1 PL対策を実行する上での前提事項
(1)製造業者には当たらない船主・オペレーターのリスクの存在
船舶、或いはその構成部品・製品の欠陥が原因で人身或いは財産上の被害が発生した場合には、法律上は造船所及び舶用機器メーカーが製造業者としての責任を負うことになる。しかしながら、船舶はその製品としての性質上、適切なメンテナンスがその安全性を維持する上で重要であり、従って、船主やオペレーターもその管理上の注意義務違反を問われて、法律(PL法)上の賠償責任を負うことになる可能性が高い。
さらに、船舶は、乗船する乗組員の国籍や文化的背景に合わせて、適切な注意・警告表示の方法「使用言語、絵文字など)を選択する必要がある。船主及びオペレーターは、当該船舶がどの地域で使用されるか、或いはどの国籍の乗組員が乗務するか、などの事情を最もよく知りうべき立場にあり、従って、船主及びオペレーターは、この点を十分配慮した対策を講じなければならない。
例:買船した船舶に乗船させる乗組員の大半がK国人であるにも拘わらず、当該船舶に使用されている警告表示や取扱説明書類がすべてE国語表示である場合には、それらをK国語表示のものに交換する。
さらに、最終的な法律上の責任は別にしても、事故が発生した際に被害者からのクレームを最初に受け付けるのは船主・オペレーターである場合が多く、従って、クレームに対応する為に相当のコストを負担することも覚悟しなければならない。
(2)各企業間の連携・コミュニケーションの必要性
上記4.1.1及び4.1.2で述べた、船舶のPLリスクの特徴(船舶の国際性、行動範囲の広域性、過酷な使用条件など)に配慮する必要がある為、船主、造船所、舶用機器メーカーはお互いによく連携し、情報を交換しながら製品安全対策(CPLP対策)を進めていく必要がある。
(3)責任分担の明確化の必要性
船舶もしくはその機器に欠陥があり、これにより事故が起きて被害が出た場合、その原因によっては、船主、造船所、舶用機器メーカー、部品・原材料メーカーなどの間に複雑な責任関係が生ずる。従って、万一のトラブルが発生した場合に備えて、原因究明へ向けての協力義務、各社間の責任分担の方法、賠償資力の確保(PL保険の付保)などについて、各社間の取引契約において明確に取り決めておくことが望ましい。
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