
(5)PL事故の被害者となりうる当事者
(a)乗組員
乗組員は通常、船員としての訓練を受けたプロフェッショナルであり、この意味においては、使用者として要求される注意のレベルは一般の消費者のそれと一線を画すべきと言える。しかしながら、乗組員も、学歴、乗船年数などによって専門知識や経験に大きな差があり、この点には十分留意する必要がある。
(b)各種作業員、検査員、その他
船舶には、乗組員の他に機器の据え付け、運転・操作、点検・整備、運搬・塗装、検査などの為に多くの作業員や検査官が出入りする、多くの場合、一定の専門知識を有しているが、そのレベルはマチマチである。
(c)乗客など
客船、フェリーなどの場合、不特定多数の乗客が乗船する。当然のことながら、乗客は船舶に関する専門知識を持ち合わせておらず、乗組員に比べると、不適切な取扱いによる事故に遭う可能性が高い。従って、彼等に対しては、極めて木目細やかな注意・警告を行うことが必要になる、貨物船やタンカーなどについては、停泊中に、荷主関係者、損害鑑定人、保険会社調査員などが乗船することが予想される。これらに対しては、船主側が法律上どこまで注意・警告義務を負っているか必ずしも明確ではないが、事故防止、訴訟防止の観点からは、可能な範囲で一定の配慮を行うことが望ましい。
なお、上記に加えて、上記のいずれの当事者も、多様な国籍・言語・文化的バック・グラウンドを有していることも忘れてはならない。
4.1.2 保険でカバーされる範囲とその限界
(1)一般論としてのPL保険の特徴
PL事故が発生した場合に備えて、PL保険を付保することが有効な対策の一つとして挙げられる。しかしながら、PL保険を付保しても、完全なPL対策を実行したとは言えない。PL保険には、必ずてん補限度額が設定されており、それを上回る部分については保険金が支払われない。さらに、製品自体に生じた損害、欠陥製品の回収費用、懲罰賠償金、契約により加重された責任など、保険の約款上てん補の対象外と規定されている損害が発生した場合にも、加害者となった企業側が自己負担をすることになる。
(2)船舶に関わるPL保険を取り巻く特殊事情
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