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4. 船舶業界におけるPL対策の必要性

4.1 船舶とPL法

4.1.1 船舶の特徴
(1)船舶は、複数の製造者の製品から作られた製造物である
船舶は、船体、機関、舶用機器、艤装品など、極めて多くの製造業者の製品から成る製造物である。個々の構成部品や製品のメーカーが、国内法や各国船級協会規則によるほか、独自の安全基準の下に設計、製造を行っているため、個々の構成部品や製品を単体で見た場合には危険が存在していない場合でも、「船舶」という特殊な空間に設置されることにより生ずる潜在危険もあり、これらに対する対応も必要になってくる。
また、一度事故が発生した場合、多くの企業の間で複雑な責任関係が生じることが想定され、事前に責任分担や原因究明に関する協力義務を規定していくことが必要である。

 

(2)船種、型式、仕様が多様である
船舶は、個別生産で一般毎に仕様が異なる。機器についても多品種少量受注生産形態であり、品種の多様化が進展している。従って、潜在危険の内容や性質も多様であり、ガイドラインに従って統一性を維持させつつも、個別の危険を考慮した製品設計、警告・注意表示を行わなければならない。

 

(3)耐用年数が長い
一般的に、船の耐用年数は長いもので30年とも言われ、非常に長期間の使用を想定して作られていなければならなず、この点が一般製品の場合と大きく異なる点である。従って、警告・ラベルの材質には耐久性のあるものを使う必要がある。さらに、各種の取扱説明書や操作マニュアルの作成及び供給についても、同様の注意が必要である。
我が国のPL法は、製品が流通に置かれてから10年が経過した後はPL法に基づく責任を免責するとの消滅時効の規定を設けているが(製造物責任法第5条第1項)、これは、10年経過後は一切の法的責任が免除されることを意味するものではない点に注意を要する。すなわち、船舶(若くは舶用機器)が引き渡されてから10年を経過した後であっても、裁判所が適当と判断すれば、造船所(若くは機器メーカー)に対し、民法の不法行為(民法第709条)に基づく賠償責任が課せられる可能性もある。

 

(4)過酷な条件の下で使用される
船舶及びその機器は、気象・海象条件などが激しく変る、極めて過酷な環境の中で使用されるという特徴を有している従って、造船所及び舶用機器メーカーはこの点に十分配慮して、製品本体及び警告ラベルに高度な耐久性をもたせるように、注意する義務を負う。

 

 

 

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