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3. PL対策のあらまし

PL法の施行に前後してクレーム件数が増加すれば、損害賠償金の負担はもちろんのこと、損害賠償責任の有無にかかわらず紛争処理のためのコストが発生する。また、現代の大量生産システムの下、ひとたび深刻なPL事故が発生したならば、広域における多数の被害者と巨額の損害賠償請求がもたらされる可能性も否定できない。その意味において、PL事故は、企業の経営を揺るがしかねない深刻なリスクであると言うことができ、従って、企業は、そのような事故の予防と紛争処理コストの低減のために適切な対策を講じていく必要がある。
企業におけるPL対策は、「PL事故の発生を未然に防止するための対策(PL事故予防対策=Product Liability Prevention:PLP)」と「不幸にしてPL事故が発生した場合に企業が負う被害を最小化するための対策(PL事故防御対策=Product Liability Defense:PLD)」とに大別される。
PLP対策とは、安全面で欠陥のない製品を社会に提供していくための方策(製品安全対策)のことであり、設計面での安全性への配慮、品質管理の徹底、ユーザーが製品の誤った取扱いをしないための警告ラベル・取扱説明書の充実などが主なものである。
PLD対策においては、文書作成・保管の適正化が万一の訴訟の際の有力な防衛策となるほか、複雑化する生産分担形態に合わせた関連業者との責任関係の明確化やPL保険の手配に代表される賠償資力確保が必要である。

 

3.1 製造物責任予防対策(PLP対策)のあらまし

製造物責任とは「製品に欠陥があった=通常備えるべき安全性を欠いていた」場合に企業が追及される損害賠償責任である。従って、製品が通常備えるべき安全性を欠いているような状態をできる限りなくすこと、言葉を代えるならば、「製品事故の防止に今まで以上に関心を持ち、より安全な製品を供給していくこと=製品安全対策」が本質的な事故予防策となる。そのためには、まず、PL法第2条第2項に定める「欠陥」の具体的な意味について十分に理解する必要がある。

 

(1)欠陥の種類
欠陥は、通常、(a)設計上の欠陥、(b)製造上の欠陥、(c)指示・警告上の欠陥の3つに分類され、それぞれの形態に応じたPL事故予防対策を講じていく必要がある。
(a)設計上の欠陥:製品の設計の際に十分に安全性が配慮されなかったために、製造される製品が安全性を欠く結果となり、事故が発生したような場合
(b)製造上の欠陥:設計には問題はなかったが、製造工程における何らかの原因により意図された安全基準を下回るような製品が作られ、出荷されて事故が発生したような場合
(c)指示・警告上の欠陥:事故を防止するために必要な製品の使い方や危険に関する注意や警告をユーザーに与えなかったために事故が発生したような場合

 

 

 

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