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ではない。特に販売業者や修理・整備業者などについては、現行法の下でも契約責任によって比較的容易にその責任が認められ得る点に留意する必要があると言える。

 

(5)欠陥責任
第三条(製造物責任)
製造業者は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。

 

民法の下で被害者が製造業者などの過失を証明することは容易ではないとの観点から、PL法においては、「過失」に代えて「欠陥」を証明すれば足りるという考え方が採用されている。このような考え方を欠陥責任−欠陥を責任要件とする無過失責任−と呼んでいる。(但し、あくまで、製品に欠陥が存在し、そこから損害が発生した場合にのみ責任を負うのであり、製品によって生じた損害を全て賠償する「結果責任」あるいは「絶対責任」が課されているわけではない。)この考え方の下では、被害者は、「製品に欠陥があったこと」、「事故により損害が発生したこと」及び「製品の欠陥によってその事故が引き起こされたこと(因果関係)」を証明すれば良く、従って、被害者の立場から見れば、製造業者などの過失の証明が不要となったことから、その負担が軽減されたことになる。
また、PL法の下で賠償を請求することが可能な損害については、特に制限はなく、従って、欠陥から発生することが通常予見できる損害、いわゆる相当因果関係の認められる範囲の損害が対象になると判断される。加えて、PL法によって保護を受ける被害者は特に個人消費者に限定されておらず、法人もPL法に基づく損害賠償請求を行うことが可能となっている。但し、損害が製品自体にとどまっており、いわゆる拡大損害が発生していない場合は、PL法の対象にはならない。例えば、テレビから火が出たとしても、テレビの一部が焼損しただけで、火災や火傷といった拡大損害が生じていない場合や食品に不純物が混入していたり、腐敗していたとしても何ら人身被害が生じていない場合などは、PL法の対象ではなく、民法上の問題として処理されることになる。なお、PL法の内容の検討にあたって、消費者保護により重点をおく立場から、欠陥の存在及び欠陥と損害との間の因果関係の存在について法律上の推定を行い、被害者の証明負担を更に軽減することの必要性が主張された。しかしながら、本法においては、そのような規定は採用されておらず、従って、前述の通り、?欠陥の存在、?損害の発生、?欠陥と損害との間の因果関係の存在については、民事訴訟の原則に則り、原告(被害者)側が証明する必要がある。

 

 

 

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