による法執行活動の法的構造が、海上における連邦法令の執行について一般的包括的に権限を付与するというものであるのに対して、ドイツでは、個別の法令によって実力行使のための法的根拠を定めるという構造になっていることを指摘する。そして、日本の海上保安庁法の構造も、海上における犯罪・行政法令違反の捜査のみならず、「法令の執行(励行)一般についての任務と権限が付与されている」ことを明らかにする(6)。
上記の村上教授の研究は、日本の海上保安庁法の構造が、アメリカの沿岸警備隊に関するエンフォースメントと類似していることを提示している。確かに、日本の海上保安庁法は、「法令の励行」のための措置を行なう権限を一般的に認めている。しかし、日本においては、励行すべきもとの法令の側に、執行機関の実力行使を伴う措置を行なうための仕組みが置かれていないのが通常である。現在の日本では、代執行を除いて、直接強制・即時強制ないし行政調査のための一般法が存在していない。また、個別法によって実力行使の法的仕組みを定める場合も、出入国管理法による退去強制手続や、道路交通法による駐車違反車両のレッカー移動などの例のように、極めて複雑な条文構成による煩瑣な手続とならざるを得ない(7)。以上から考えるならば、海上保安庁法によって、刑事罰によって担保された法令違反の捜査活動に含まれない、単なる行政法規の執行のための措置(実力行使)を一般的に根拠づけることには困難な部分があると言わざるを得ない。
このことの一端は、村上教授の研究が明らかにしているように、海上保安庁法がアメリカ法をモデルとする基本構造を持つのに対して、日本の一般的な行政法(警察法)の構造がドイツ行政法的な伝統の下にあるという齟齬に由来している。日本の行政法体系では、個別の行政法令を根拠とする規制システムが存在し、その規制システムの実効性を担保する措置として行政機関に実力行使が仕組まれるのが通常である。従って、あくまでも措置の前提となる規制システムが、個別法令によって整えられていることが要請される。加えて、ドイツでは行政強制に関する一般的な法令が存在するが、日本ではそれも欠けているため、個別法令の中に実力行使のための法的仕組みを置くことも必要になってくる。これらのことを考えるならば、排他的経済水域・大陸棚に関するわが国
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