日本財団 図書館


場所に適用するという形ではなく、EEZ又は大陸棚の特定事項に適用するという形を取っている点に留意する必要があろう(同法第3条(1))。これは、領海のように、領域として国内法令が当該場所に全面的に適用できるという形ではなく、EEZ又は大陸棚においては、国連海洋法条約が特定事項についてのみ沿岸国の主権的権利及び管轄権行使を認めていることに対応したものである。それは、当該海域に具体的な国内法令を適用するにあたって、その国内法令が全面的に適用されるのではないことを意味する。海防法のごとく、従来は自国船舶を別にすれば、原則として領海内のみに適用されていた国内法令をこの規定によって、いわば自動的にEEZ等に拡大する場合には、その内容すべてをただちにEEZ又は大陸棚に適用できるとは限らない。当該法令が、国連海洋法条約に認められた管轄権行使の範囲に合致しているかどうかの点検が必要となる。
(3)EEZ・大陸棚法第3条第3項は、EEZ等への我が国の国内法令の適用に関して、「当該法令が適用される水域が我が国の領域外であることその他当該水域における特別の事情を考慮して合理的に必要と認められる範囲内において、政令で、当該法令の適用関係の整理又は調整のために必要な事項を定めることができる」とし、適用関係の調整を政令に委ねた。これを受けて、「排他的経済水域における海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等の適用関係の整理に関する政令」(平成8年政令第200号、以下「EEZ適用関係政令」という)さらに「排他的経済水域における海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律に基づく運輸省令の適用関係の整理に関する省令」(平成8年運輸省令第41号、以下、「EEZ適用関係省令」という)が制定されている。後述するように、これらのEEZ適用関係政令及びEEZ適用関係省令は、EEZに対する海防法及びその政省令の実体規定の適用関係を整理、調整しているが、執行関係規定には触れていない。海洋環境の保護及び保全に関する国連海洋法条約の規定は、実体規定と執行規定の両方に及んでいることを考えれば、国内法令の執行にあたっては、常に国連海洋法条約の内容との合致を要求されることになる。以下、海防法のEEZへの適用の構造を概観することにしたい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION