はしがき
1.わが国は、昨平成8年6月に、懸案であった国連海洋法条約の批准に踏み切り、同時に多くの関係国内法令について新規立法または改正の措置をとりました。新海洋法秩序をわが国内で実施するための法制が整備され、今後はその具体的な解釈・適用・執行の仕方について、関係諸国の関心を集めることになる、と考えられます。
2.このように大きな事態の進展を受けて、本平成8年度から「海洋法調査研究委員会」が新たに組織され、海洋法条約批准後の海洋法制の展開とこれに伴なう海上保安法制の重要な課題について調査研究することになりました。これまでの海洋法条約検討委員会は、昭和62年度以来3期9年にわたり、海洋法条約のもとでの海上保安法制について、関係国内法令の解釈・運用上の主要問題の検討と、今後の法制整備に関する提言を行ってきましたが、平成7年度をもってその使命を終えた、と判断した結果であります。
3.今期の調査研究委員会は、学者側委員が中心となって、調査研究テーマの選定と個別項目の報告を担当し、官庁側委員は討議など側面的に参加することにいたしました。このため、従来に増して、国際法、刑事法、行政法、海上警察法など各分野の学者側委員を整え、海上保安大学校の関係教授各位のご参加を得ることもできました。
4.この第一年度は、領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚など、海域区分により主要事項に関する執行措置を対象に選び、海洋法条約と関係新国内法令の適用をめぐる具体的な問題点を検討いたしました。委員会は年間4回開催され、各担当委員の報告と討議が重ねられました。その内1回は呉に赴き、藤井海上保安大学校長をはじめ多数の教官も参加されて、充実した討議を進めることができました。また、安冨委員は、米国及びカナダでの海外調
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