く、地域の運営を合理的に行うことができた一点、そして社会主義期から地方制度改革を進めていた点で、他の東欧諸国と異なる好条件を有していると指摘している。またハンガリーとの立場の近さに着目した比較では、ハンガリ』では改革を実施した後に選挙を行ったのに対し、ポーランドでは選挙が制度変革に先行したことで地方改革に対する明確なビジョンが形成されなかったとしている。ただし選挙では両国ともr全国レベル」に関心が集中したために投票率は低くなり、またその争点も地域の問題より国の政治の問題が中心になることが多かったと指摘している(Swianiewicz1992:92−3)。
またエランダーら(El?derandGust脈s?1993)は、ポーランド・ハンガリー・(1日)チェコスロヴァキア3ヶ国の地方制度に関する比較を行っている。そして東欧諸国における地方制度に関する共通の問題として、地方の経済面での役割が広がる一方で財政基盤が十分に整備されていない点、西欧的な利益勢力の活動が活発になる、一方で、実際の行政では旧ノメンクラトゥーラに依存しなければらならないという板挟みが生じている点、国家と地方、並びに地域間の利害対立が発生している点、そして自治体の規模が小さすぎるという点をあげている。
だが現在のポーランドでは、地方の財政制度はある程度整備されつつあり、行政における専門化・技術化も浸透しつつある。国と地方の関係も財政問題を除げば基本的に良好であり、そしてグミナは一定の規模を有している。特に以下の点については、ポーランドは体制移行諸国の中でも先行しているのではないかとも考えられる。
(1)地方財源の構造
ウォリッチは東欧諸国の場合、地方政府の財政基盤は中央政府からの移転に大きく依存していて、自主財源をほとんど持ち合わせていないという指摘を行っている(ウォリッチ1996:17)。だがその中でポーランドは、地方税収入で約25%、財産収入などを含めた自主財源が自治体の全収入の4割程度をしめ、少なくとも「日本並み」の自主財源を確保している。しかもポーランドでは交付税や補助金の算定基準においても明確で、かつr政治的余地」が入る余地の少ない制度を導入することに成功している(補助金が実際に交付されない場合があるという問題は残っているにしても)。そして96年段階において、ポーランドの地方予算は国の予算の28%、GDP比で8.6%となり、EU基準において「分権化を開始した国(地方予算が国家予算比20%、GDP比7%未満)」からr分権化が進んだ国(国家予算比26%未満、GDP比7%から10%)」の段階に移行したとされる(Przeglad Rzadowy 1995 Nr.12:94)。なぜポーランドでは限定的とはいえ、地方の財政基盤を強化する方向で改革が進められたのか。逆に言えば、なぜ他の東欧諸国では地方の財政基盤の整備が進んでいないのか。この点は一つのポイントとなろう。