日本財団 図書館


め、オムスク市議会の場合は20人としている。さらに、市内の地区を設定しながら、そこには代表機関は置かれていない。

スヴェルドロフスク州地方自治法は、全文77か条からなるかなり詳細な規定をもつものである。ここでは代表機関をドゥーマと呼び、4年任期で、少なくても10人以上の議員を置くこととしている。首長(行政長官)の任期はやはり4年で、代表機関の構成員たることを予定していない。カレリア共和国地方自治法もまた詳細な規定を置くが、自治体における国家行政という問題を設定し、国家の行政機能を担当する国の出先機関について定めているのが眼につく。代表機関はソヴィエトとされ、住民の直接選挙による首長はソヴィエトの活動を指導するとの規定がここにもある。ヴォロネジ州地方自治法は、代表機関はソヴィエト、執行機関は地方行政庁とし、代表機関による執行機関にたいするコントロール、行政長官の代表機関による選出と代表機関への報告義務、代表機関による解任手続を定め、ここでは議会優位の自治体機構を予定している。ここでも、地域的社会的自治としてスホートや住民会議を位置づけている。他方、ヴォログダ州の地方自治法は、地区、市、村ソヴィエトを自治体の単位とし、地方自治の体系に、地域的社会的自治機関をも含み、市と地区において、地方自治体の首長を選挙する可能性を認め、ここでは逆に、この首長が代表機関の議長をつとめ、あわせて地方行政庁の活動を指導すると定める。

ただ、これらの地方自治法はいずれも95年地方自治法制定以前のもので、今後手直しもあることが予想されるので、そのいずれもが過渡的なものであることを前提としておかなければならない。以下に、いま少し個別的な事例を紹介しておきたい。

ア モスクワ市

モスクワ市は、いうまでもなく首都であり、憲法上は連邦の構成主体とされる連邦直轄市である。かつて、モスクワ市には30を超える地区があり、それぞれに代表機関としてのソヴィエトがあった。集権的な都市行政とその効率化の必要のためか、その再編は早くから話題になっていた。現在、モスクワは、10の行政管区(市長の任命になる行政長官が管理、代表機関は存在せず、自治体とは位置づけられていない)とその各行政管区に8〜17の地区がある。このモスクワ市内の地区における自治機関をめぐって、調査時点では大いに混乱した。そこに代表機関があるかとの問いに、選挙制のものであるかどうかについて人々の説明が食い違っていたからである。そしてもうひとつ、モスクワ市における地方自治体とは何をさすのかについても混乱があった。クーデタや政治的動乱の舞台でありつづけたモスクワだけに、こうした混乱にはやむをえない側面も当然あろう。モスクワ市は、現在市民の圧倒的支持を集めるルィシコフ市長が(モスクワ市首相も兼ねる)、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION