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どうかが問題となる。首都地域を国の直轄地とした場合に、当該地域は憲法上の地方公共団体ではないので、憲法94条の条例制定権が保障されるには及ばないことになるようにもみえる。しかし、前述したように、首都地域であっても、そこに住んでいる住民には、日々の生活や行政に関して発言の機会が保障されなければならないと考えられる。条例制定権は、地方公共団体の自治にとって重要であるばかりでなく、住民による住民自治ないし住民の行政決定権としても重要な意味をもつ。したがって、首都地域の行政組織ないし住民にも条例制定権を与えることが憲法の趣旨に適合する。このことは、首都地域を地方公共団体に準じた特別の行政団体として組織した場合にも妥当しよう。
 ただし、首都地域を国の直轄地とした場合に、条例制定権を認めないことが違憲となると解することは若干騰踏される。憲法94条は条例制定権を地方公共団体について認めており、したがって、地方公共団体ではない行政組織に条例制定権を認めないことが直ちに違憲となるとはいいにくいからである。また、住民の民意反映のための制度が必要であるとしても、それが条例制定でなければならないとはいえないからでもある。しかし、住民による意思表明の直接的かつ明確な制度である条例制定権を認めることは、首都地域の行政の実施にとって好ましいことであることは疑いないところである、また、条例制定権を「準地方公共団体」に付与することが合憲と解されうることについては、前述した。
 もっとも、論理を逆転させれば、条例制定権を首都地域の行政団体にも認めるのであれば、むしろ、首都地域を国の直轄地として組織化せずに、むしろ端的に地方公共団体として組織することが実態に即することになろう。

6 憲法95条の地方特別法に対する住民投票

(1)憲法95条の地方自治特別法に対する住民投票の趣旨

 憲法95条は、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」と定めており、この規定との関係で、首都地域の法的規制のあり方が問題となる。この規定の趣旨は、国が特定の地方公共

 

 

 

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