にふさわしいものであり、したがって、市町村の制度について、その権限や組織の変更が細部についてのものであれば違憲とはならないが、市町村制度を廃止したり、その地方行政権の基本的部分を改廃したりすることは憲法の地方自治の保障に反することとなる(制度的保障説)。もっとも、市町村という組織もまったく変更できないというわけではなく、地方自治行政の基本制度を改める一貫として、市町村の権限の実質的な縮小等を伴わないかぎりで、「市町村」を「区」に改めるなどの改革を行うことなどは憲法上可能であると思われる。この意味では、市町村という現行制度についても変更できないわけではないということができよう。
基本的な地方公兵団体である市町村は、日本の領域を分有しその大部分をおおっていなければならないことは、前述の通りである。そしてまた、各市町村の組織と権限は、全国の市町村に共通して一律のものとなるように法制化されなければならない、ただし、地域ごとに市町村の組織および権限が異なることになると、市町村間の格差と不平等が生ずるからである。実際にも、地方公共団体の組織および運営について定める地方自治法では、市町村の組織が統一的に定められている。
もっとも、ここでも、ある限定された地域について、特別の合理的理由に基づいて、地方自治法で規定された市町村以外の地方公共団体を創設し、特別の組織・権限ないし特別の規律を設けることまで、憲法は否定していないと解される。そのような例としては、現に東京都(および特別区)に典型的にみられるが、さらに、地方自治法上の指定都市(地方自治252条の19)や中核市(252条の22)の制度に特別規定が設けられている。これらの例をも参考に考えると、首都地域についても、地方自治法上の市町村とは異なった特別の地方公共団体を創設し、特別の権限と規律を設けることは可能であると解される。もっとも、後述するように、その特別の地方公共団体についても、憲法上の地方公共団体として当然に要求される諸制度と諸権限を具備していなければならないことに注意する必要がある。
(2)都道府県と市町村の二層制
憲法上の地方公共団体の意義に関連して、憲法が都道府県と市町村の二層制を要請しているかどうかについて議論があり、それは首都地域の地方行政組織のあり方にも関係する。都道府県と市町村の二層制について、学説は、二層制が立法政策とする説、二層制が憲法上の要請である説とがあり、後者のうちでも、都道府県・