必要とされる事項を中央行政を通じて執行する(留保事務)。その他の行政事項はベルリンの区が遂行する(区固有事務)。ベルリンの区域は23区に分けられており、これらの区は、内閣の一般的指示に従って法律と命令を執行するよう義務づけられている。さらに内閣は、憲法の授権に基づいて、中央の市行政に留保された一連の事務の履行を区に委任している(委任された留保事務)。
イ 区政
ベルリンの区は自治行政の原則に従って行政に参加するが、後述のように、連邦基本法28条2項が市町村に保障する完全な自治行政権はもっていない。いずれの区においても、市議会の選挙と同じじきに区代議員会議(以下、区議会)の選挙が行われる。区議会は、45名の議員で構成される。また、区議会は区理事会のメンバーを選出する。区理事会は区長と区理事からなり、区理事のなかから1名が区長代理に選出される。区議会は区の自治行政の機関である。区議会は区行政の統制を行い、予算策定権をもつ。1994年7月の改革までは、予算策定権は市議会がもち、区議会は予算案の基礎として毎年の財政需要を確定する権限をもつだけであった。区議会は委員会を設置することができ、委員会は区議会の議員と市民代表で構成される。市民代表は区議会によって選出され、名誉職である。
区理事会は7名の区理事(1994年4月以降、4名)と区長からなり、区の行政官庁である。区理事会は、区の事項についてベルリンを代表する。また、区長は区理事会における会議の議長をつとめる。可否同数の場合は、区長が可否を決する。
ベルリンの区は法人格をもたず、条例制定権、課税権を与えられていない。また、1994年7月までは予算策定権も認められていなかった。さらに、区で行われる「自治行政」はあくまでも行政であり、区議会の議決権の対象も行政上の決定に限られている。区の権限に関して疑義が生じた場合については、中央の市行政が決定権をもっている。これは、ベルリンが都市州であり、地方自治の前提である国家と地方自治体の両極がそもそも存在せず、都市州としての一体性を保つためにもある程度の集権化が必要とされているためである、このように、権限の観点からすればベルリンの区は、東京都の特別区と政令指定都市の行政区の中間に位置するといえよう。