きる。そして、しなやかな主体同士の謙虚で闇達な会話が意味世界の編成’をいっそう創造的にする。何故ならば、異質な人間の異なった記憶連鎖が異なったコトバの配列(言説)を生み出し、その交換が一人では不可能なような意味世界を創り出すからである。実際、SFCで開発中の意味づけ論は、現在、そうした知見を蓄積しつつある。われわれは、コミュニケーションを支配することはできないが、創造的に活用することはできる。協働的コミュニケーションによる思考はモノローグ思考よりもはるかに創造的である(これは「意味づけ論づくり」においてわれわれ自身(深谷・田中)が強く実感したことである)。
(7)協側的コミュニケーションとその活性化のための条件
価値創出型社会への転換にはさまざまな改革が必要であろうが、本稿の視点からは、協働的コミュニケーションの活性化こそがそのカギだということになる。したがって、その条件整備の重要性が浮上する。まず、参加者には「ものの見方・考え方」を自ら再編成する「自律的でしなやかな主体」であることが要請される。これは教育改革に関連してくる。特定の目的を指向した技術・知識の詰め込みに偏重し、柔軟で創造的な思考の編成を軽視してきた従来の教育を改めなければならない。SFCの創設は創造型教育への転換をめざすものであった。授業形態に双方向コミュニケーションやグループ・ワークを積極的に取り入れているのは協働を促進するためである。次に、制度面では、協働的パブリック・コミュニケーションを尊重し、その前提条件となる情報公開・開示を制度化することである。これから重視されるべきなのは透明で開かれたコミュニケーションであって、閉鎖集団による談合的コミュニケーションではない。協働による価値創出の源泉は、互いに異なった記憶の集積者が異質なコトバの配列を交わすことによって、新しい意味世界を編成することにある。そのためには透明で開かれたパブリック・コミュニケーションが活性化されなければならない。異質な他者同士の場合、ともすると、信頼性への疑念が闇達なコミュニケーションの展開を阻害しかねない。このことは、隠蔽・ごまかし・虚偽が、企