2 地方単独事業として考えられる福祉施策等 斉藤弥生
市町村には、ナショナル・ミニマムを超える福祉サービスの提供が求められている。そのためには権限と財源を市町村に移行し、市町村の責任において提供するというスタイルが本来の姿と考えられるが、現実には福祉サービスの基本的部分は国庫補助事業で行われているので、住民のニーズを満たすためには地方単独事業を国庫補助事業との組み合わせによって、あるいは上乗せ的に行っていくことになる。ここでは住民ニーズの高いもので、厚生省の補助制度がない、あるいは地方単独事業の取り組みを経て、補助事業が開始された(しかしまだ端緒についたばかりのものが多い)ものを取り上げる。
(1) 施設福祉関係
ア 老人ホームの個室化
個室は賛沢であるという議論もあろうが、これからの高齢社会においては、老人ホームは従来の救貧的なものではなく、個人ができるだけ気兼ねなく利用できるものでなければならず、高齢者のプライバシーの問題を考えると、やはり必要なものである。現状では4人部屋、古い施設では6人部屋もある。国庫補助基準ではホームの定員の30%分しか個室の整備が認められないため、全員の個室化は地方団体の持ち出しが大きく、その整備はなかなか進んでいないのが現状である。
イ 小規模老人ホームの増設
国庫補助の基準は50床(都市部及び過疎地では30床)以上である。このため町の中心部の小さな土地に10〜20床という小規模の老人ホームを建てようとしても補助対象とならない。大都市圏では、高齢者が遠隔地の施設に入所せざるを得ず、そのため家族も疎遠になりがちであったり、住み慣れた土地を離れることの不安といったことを考えると、都市の中心部にも