第1章
地域特性と既定計画
1 玄海諸島の広域的立地特性
(1)自然地理的特性
ア 環東シナ海域・玄界灘にあって、東松浦半島に近接する小規模島嶼
玄海諸島は、広くは“アジアの地中海”の一隅、環東シナ海域・玄界灘にあって、九州と朝鮮半島・中国大陸との接点地域に位置する。東松浦半島に近接し、最短の神集島で約0.6km、最遠の馬渡島※でも約8kmの距離にある。最も離れた馬渡島からは、北西方向に壱岐、対馬、南西方向に平戸島が遠望できる。(図表3)
※馬渡島を中心にすると直線で、壱岐島まで約12km、平戸島まで約30km、対馬島まで約70km、朝鮮半島まで約200kmの距離である。
イ 本土最遠の馬漬口から福岡市、佐賀市まで直線約60km
本諸島から、福岡、佐賀市中心部まで、最短の高島から直線約40km、最遠の馬渡島から直線約60kmの距離にある。(図表4)
総じて、連絡船から自動車に乗り継ぐと、概ね日帰り圏(片道2.5時間圏)に福岡都市圏や佐賀市周辺を取り込む位置にある。
ウ 対局海流のまっただなかにあって周辺海域は水産資源に恵まれる
本諸島は黒潮の支流・対馬海流(日本海沿岸に“青潮”の呼称がある)のまっただなかにある。冬季も比較的温暖で、植生は椿、ウバメガシ、竹などの照葉樹が多くみられる。対馬海流によるブリ、アジ、イワシなどの回遊魚、イカ、カサゴ、メバルなどの根魚、サザエ、アワビ、ウニ、ワカメ、ヒジキなどの磯資源も豊富である。
工 日本海性気候で冬季は北西の季節風が厳しい
本諸島は日本海性気候帯に属し、冬季には北西の季節風“あなぜ(じ)”が強く、海上は時化ることが多いが、その他の季節は比較的穏やかである。九州西方を北上し、日本海に抜ける台風の通路になることが少なくない。
(2)社会経済的特性
ア 海人族の伝承、大陸往来の痕跡が豊富な海の歴史回廊に位置する
本諸島は、大陸との位置的近接性、対馬海流などから、古来、国際的な文化のすもぐあまじんぐうこうごうコリドール(回廊)に位置し、「素潜り漁」にみられる海人の歴史・文化や「神功皇后の