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  4−3内航海運の船舶コストならびに用船料の推移

 内航貨物船の運賃には定期船サービスに適用される定期船運賃と不定期貨物の輸送で行なわれている当事者間の交渉による自由運賃とがある。定期船にはコンテナ船やRORO船、不定期船には鋼材を運ぶ一般貨物船やセメント専用船、オイルタンカー、ケミカルタンカー、自動車運搬船(PCC,CGC)等である、しかし、内航海運サービスでは積地や揚地が一定しない貨物が多く、船舶の運航方法や港湾荷役能力が大きく異なっている。内航貨物船は船種、船型が多種多様であって運送原価の差が大きく、他の輸送機関のような画一的な運賃・料金の設定は極めて難しいものといえる。そのため、内航海運業法では、必要があると認められる場合には標準貸渡料や標準運賃・料金を設定して、業界の健全な発達を誘導することが可能である。
 現在、日本内航海運組合総連合会(以下、総連合と略称する)では、貨物毎に貨物船、土・砂利・石材専用船、セメント専用船、自動車専用船、油送船、特殊タンク船の6部門に分けて、船腹調整を行なっており、貨物船以外は船舶が専用船化しているため用船料や運賃もこうした部門ごとに決められている。
 本調査においても、内航海運の運賃や用船料に関してみると、運送業者では経営状態が余りよくないという業者は「適正運賃収受ができない」ことや荷主からの厳しい「運賃の値下げ」要求に対応することを余儀なくされており、貸渡業者は「用船料の低下」や「用船契約条件の低下」、さらには「用船契約の解除」といったところまで追い込まれている。
 このように九州の内航海運業者は、非常に厳しい内容を内航貨物輸送の問題点あるいは課題としてあげている。また、海運造船合理化審議会答申(平成7年6月)のなかでも「運賃及び用船料に係るコスト負担の適正化」が重要課題の一つとして取り上げられており、荷主の協力を求めると同時に内航海運業者も船舶運航コストばかりでなく店費の削減に積極的に取り組む必要があるとしている。一方において、バフル経済の崩壊後においては、物流コストの低減は荷主企業において極めて重要な課題となっており、トータル輸送コスト削減のために海上輸送へのシフトを模索している企業もある。元より輸送量の多い鉄鋼業や化学工業、農薬・薬品工業、輸送用機械製造業等でも専用船や内航コンテナ船、RORO船、さらに内航運送業ではないがフェリーの需要には根強いものがある。また、さらに、環境保護の観点からも内航海運利用を希望している潜在的な需要がかなり多くみられる。
 ここでは、現在、内航貨物輸送の代表的な運賃指標となっている499G/T型と199G/T型の一般貨物船の用船料と総連合の用船料委員会が算出している「新造船船舶コスト」を比較してみることとする。さらに、この新造船船舶が減価償却された場合を想定して、減価償却後の船舶コストがどのような水準にあるのかをみてみた。減価償却後の船舶コストの算出方法については、ここでは便宜上、滅価償却後の資本費は「ゼロ」と見なし、さらに、修繕費は内航海運業者へのヒヤリングから新造船の

 

 

 

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