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  (4)共同化、協業化の実態

 現在、九州・山口地域の内航海運業者が行っている共同化、協業化は、すべて「協業組合」によるものであり、13の協業組合が組織されている
 協業組合は、組合員になろうとする中小企業者が従来から営んでいた事業の一部又は全部を共同して経営し、事業規模の適正化によって生産性の向上を図ろうとする組織である。協業の形態としては、『一部協業』と『全部協業』がある。一部協業は、組合員事業活動の一部分(例えば、海上運送事業や内航海運事業の一部である船舶の共同運航など)を協業する場合や、組合員が取り扱う海運サービスの一部分を協業することも可能である。全部協業は、組合員が行っている事業の全部を統合するものであるが、組合員が異業種にわたる場合でも全部協業は可能である。(例えば、異った輸送業者が協業して一貫輸送を実現すること)。
 今回の実態調査によれば、回答のあった協業組合は8組合あり、すべて、1〜3号業者である。運航隻数は6隻の組合が多く、船種は一般貨物船と砂利運搬船だけである。業績をみると「良い」のが1組合だけで、「あまりよくない」が5組合、「悪い」が2組合である。業績の悪い理由としては「一時的な減少」、「産業構造の変化」、「業界の過当競争」を挙げている。
 船舶の採算性については、自社船はまあまあ採算がとれているようであるが、用船では採算割れが2組合である。
 経営上の問題点は項目別にみると、次のとおりである。
 運賃関係では、「適正運賃が収受できない」(80%)、「荷主の値下げ要求が厳しい」(75%)を問題にしている組合が極めて多い。自社船の運航に関しては「運用コストの上昇」「船舶稼動率の低下」、「建造船価の高騰」が問題となっている。用船に関しては、「船舶稼動率の低下」が5組合で、また、一部の組合では「船腹の調達」を問題視ししている。船員関係では6組合が「高齢化」を重大問題とみており、また、それにともなう「船員賃金の高騰」も問題となっている。資金関係では、資金不足が5組合で問題となっている。
 また、内航の不況対策を考えている5組合の具体策は、3組合が「運賃値上げ交渉」をあげているが、極めて実現が難しいものとみられている。この他には「用船料の引下げ」「内航以外の業絡拡大」等があげられており、貸渡業者にとっては、さらに、厳しい環境が待ち受けているといえよう。
 荷主の物流コスト削減は、業種、品目等に係わりなく要求されている。最近では、荷主はトータルコストの削減のために輸送機関別の特性に係わりなく運賃・料金(コスト)の削減を重視している。
 こうした物流コストの削減要求に対して、内航運送業者は適正運賃が収受できないことや荷主の値下げ要求の厳しさ等を嘆いているだけでは経営改善は進まないであろう。特に山口・九州地

 

 

 

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