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4 国の施策の動向を見てみよう。

(1)農業基本法の見直し

平成8年9月10日「農業基本法に関する研究会」(座長・花開津典生千葉経済大学教授)から、農業基本法に代わる新たた基本法の制定に向けた報告書が提出されているので、その概要を見てみよう。

(「農業基本法に関する研究会報告」平成8年9月)

 

2. 新たな基本法の制定に向けた検討の必要性

(1)農薬基本法が見直しを求められている背景

農業基本法は、我が国経済社会が急速な発展を開始する時期に制定されたものである。農業基本法制定から35年が経過したが、この間我が国の経済社会は、「欧米へのキャッチアップ」という目標の下で、効率性と経済的豊かさを追求しながら、世界に例をみない急速な発展を遂げた。この結果、我が国は世界有数の経済大国となるに至り、これに伴い国民の生活水準も著しく向上した。

その過程で、我が国農業・農村は、多様化・高度化する国民の食料需要に応えてきたばかりでなく、経済発展に必要な労働力、土地等の他産業への移動等を通じ、経済の発展と国民生活の向上に大きく貢献してきた。

このような中で、農業・農村を取り巻く状況は大きく変化した。すなわち、?@農家の生活水準は向上したが、農業労働力が非農業部門へ流出し、兼業化が進展した。?A農業就業人口の減少、高齢化の進行等によって、耕作放棄地が増加する等農業生産力の低下が懸念されるようになった。?B国際化の進展と食料需要の変化により、農産物輸入が増大し、豊かな食生活が実現した反面、食料自給率は低下した。?C生産コストの上昇、円高の進行等から農産物の内外価格差が拡大した。?D都市近郊農村を中心に混住化が進行する一方、中山間地域等では、著しい過疎化や高齢化の進行により地域社会の維持が困難な地域も現れてきた。

また、最近では、効率性追求一辺倒であったこれまでの経済社会運営を反省する気運が生まれるとともに、経済面にとどまらない生活の豊かさを求める世論が高まってきている。このような中で、農業・農村に対しては、食料の供給に加えて、国土・自然環境の保全、自然に恵まれた居住・余暇空間の創出等の非経済的あるいは社会的・文化的役割について、新たな期待が生じている。さらに、健康・安全志向の高まり等を背景に、食料に対する国民の関心も強まる傾向にある。

これらに加え、現在のボーダーレス化した国際社会の枠組みの中においては、もはや、単に我が国の経済社会の状況のみを念頭においた政策展開は困難なものとなってきている。農政の展開に当たっても、WTOをはじめとする国際的な貿易の枠組みや主要国の政策展開の動向、経済大国として我が国が途上国に対し果たすべき役割、さらには地球規模での環境への配慮の必要性の高まり等を踏まえ、国際社会の中での我が国農業のあり方を議論するとともに、国際的な場において積極的に発言していくことが必要となっている。

現在の農政の課題は、こうした食料・農業・農村を取り巻く問題や国民から寄せられる期待、さらには国際化の中での様々な要請に的確に応えることである。農業基本法の掲げた政策目標の中には、兼業所得を含むとはいえ、一般的には農業従事者と他産業従事者との所得水準の均衡が既に達

 

 

 

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