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成されていることにみられるように、現在の農業情勢からみると、政策目標として掲げる妥当性に疑義があるものもある。また、国際化を含めた農政に対する新たな要請の多くは、農業基本法制定時には存在しなかったか、あるいは意識しないですんだ問題である。こうした中で、国の農政全般にわたる政策の指針である農業基本法は、政策目標と現実とのかい離と、内外における新たな政策課題への対応の必要性という両面から、その位置付けが問われているのである。
それは、現在、高度経済成長を前提に構築された我が国の経済社会システム全体について、国際化が進展し、安定成熟化する社会に対応し得るものへ変革することが求められていることと軌を一にするものであるともいえよう。農業・農村が直面する問題の重要さや農政に寄せられる期待の大きさを踏まえると、まさに今、新たな時代に対応し得る新たな基本法の制定に向けた検討が必要となっているのではないだろうか。
<中略>
3. 新たな基本法の制定に向けた検討に当たって考慮すべき視点
現在、国民の価値観が多様化する中で、農政への期待も様々であり、しばしば意見の対立もみられるところである。今後の農政の方向付けは、国民合意の下に、我が国経済社会の中での食料・農業・農村の役割や位置付けを明確にした上で行わなければならない。
このため、食料、農業.農村についての国民的な合意に向けた議論の一助となるよう、本研究会の議論の過程において、新たな基本法の制定に向けた検討に当たって考慮すべき重要ないくつかの視点と、その視点に係る論点についても整理することとした。この論点は、本研究会が関係団体等から聴取した意見も踏まえており、意見の対立点や今後の検討課題が明らかになるように整理したものである。
今後、新たな基本法の制定に向けた検討を行うに当たっては、このような諸点について、まず現状を正確に認識し、それに基づき国民的な議論を積極的に行い、合意形成を進めることが必要である。
<中略>
(4)新しい農業構造の実現
食料の安定供給を確保する上で国内農業をどのように位置付けるにせよ、農業生産にコストを際限なくかけるということでは国民の支持は得られない。このため、制約された国土条件の下でも、可能な限り生産性の高い農業生産を実現し、生産コストの低減を図っていく必要があり、また、農業を魅力とやりがいのあるものとするという観点からも、農業構造を改善していくことは引き続き重要な課題である。
現在、これまで農業生産の維持・拡大を中心的に担ってきた昭和一けた世代が、農業からリタイアする時期にさしかかろうとしている。このことは、今後農業構造の改善を進める大きな契機となるものと考えられる。
<中略>
イ. 農業の担い手の確保について
農業における過剰就業問題を解消させた高度経済成長は、反面、若年層を中心として農業就業人口を減少させ、農業労働力の脆弱化をもたらした。今後、農業従事者の減少と高齢化が更に進行すると見込まれる状況におい

 

 

 

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