
7. バリアフリーを考慮した海岸施設の事例
7−1. 海外の社会保障制度と海洋性レクリエーション施設整備
7−1−1. アメリカ
アメリカは、我が国の憲法第25条に相当する規定が存在せず、政府は原則として個人の生活に干渉しないという自己責任の精神と、連邦制の故に連邦の構成単位である州の権限が強い。このことが、社会保障制度のあり方にも大きな影響を及ぼしており、先進国中唯一、国民全体を対象とする公的医療保障制度が存在しない。また、社会福祉・保健医療サービスの分野では、州政府が政策運営の中心的役割を果たすものが多い。
アメリカの代表的な社会保障制度としては、約4千万人以上の国民の所得保障を行っている老齢・遺族・障害年金、老齢年金受給者、障害者年金受給者及び慢性腎臓病患者を対象とするメディケアとよばれる公的医療保障制度、公的扶助制度として老齢者及び障害者を対象とする補足的所得保障及び児童を扶助する家庭を対象とした扶助である要扶養児童家庭扶助があり、また、公的扶助受給者等を対象として、メディケアとよばれる医療扶助制度が設けられている。
アメリカでは、このような社会保障制度とは別にADA(米国身障者法)という法律を連邦政府が設け、総ての人々が安全に容易に社会で活動できるインフラストラクチュアの整備を推進している。この範疇には都市計画上の配慮、公共交通機関施設の配慮、スポーツ・レクリエーション施設への配慮、海岸(ビーチの遊歩道計画)整備の配慮なども含まれている。海洋性レクリエーションについては、船舶ターミナルの計画設計マニュアル、マリーナ計画設計マニュアル(斜路、桟橋、ボート上下架装置等)、その他水族館、プール、ウォーターフロントなどの各種商業施設(アメニティ整備)についてもきめ細かな配慮がなされている。
アメリカにおける海洋性レクリエーション施設のバリアフリー整備は、世界で最も進んだ国の一つと言っても過言ではあるまい。それは他の国に類例のないADAという法的整備にもよるが、州政府を初めとする郡、市、町、村、民間の幅広い理解と積極性に拠っているといえよう。それらの現れは、公共交通機関及び施設の整備に止まらず、公衆電話などの生活を支える機器などにもきめ細かな配慮が伺える。例えば、ハワイ州ワイキキビ
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