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近代西洋医学との比較対照研究は行われてこなかった。この分野は日本の医療のいわば「ブラックボックス」の状態にある分野と言える。我々は、いままで近代西洋医学において用いられてきた手法で、伝統療法や、民間療法の効果を探り、住民の意識を調査することは、日本が急速に高齢化に向かい、医療費の高騰が問題となっている今日、双方の優れている点を医療の現場に反映し、地域医療の質の向上と費用の節約を期待でき、十分に意義のあることと考え、現代の日本においてセルフケア・民間療法が行われる頻度、地域差、患者の**解釈モデル、医療機関で行われている、いわゆる’西洋医学’との使い分け、患者自身の効果判定の実状を把握することを目的として今回の調査を行った。
*セルフケア:ここでは、医療従事者からの指導とは無関係に、患者が健康問題の解決を目的に行う民間療法・伝統医学などの行為、と定義した。
**解釈モデル:患者が自分の健康上の問題をどのように理解しているか、その理解

 

対象と方法
今回の研究は、西洋近代医学と伝統医学・民間療法を対象は岩手県藤沢町の成人から抽出した500人とした。抽出の方法は、計画と異なり、藤沢町の保健センターに保管されている住民台帳より、1名の研究分担者が無作為に500名抽出した。藤沢町という1自治体に地域を限定した理由は、
1)あまり地域を拡大すると結果に与える地域の文化的背景の差が無視できないほど大きくなるのではないかと懸念されたこと
2)岩手県では今まで同様の調査が行われていないため新しい治験が得られることが期待されたこと
3)研究分担者の勤務地であり地域の情報が得られやすいこと
4)地域ぐるみで保健・福祉に取り組んでおり、住民台帳や健康に関するデータが整備されていること
5)住民の関心・意識が高いことが予想され、質問票の回収率が高くなることが期待されたこと
6)他地域が,他の研究の対象地域となっており、了承が得られにくかったことなどのためである。

 

 

 

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