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はじめに

 

「医師需給の見直し等に関する検討委員会」は、検討委員会としての意見書(平成6年11月2日)の中で、2025年には供給医師数が必要医師数を上回り、15,000人から27,000人の医師が過剰となると推計し、医師過剰を指摘する一方で、地域医療、高齢社会に対応する要介護老人等の医療、救急医療等に従事する医師の確保は困難と指摘している。また、医師の学会認定(専門)医制度等による専門医指向、あるいは大病院・都市部の医療機関等への勤務指向に加えて、平成4年度末現在(厚生省調)の年齢別医師数分布をみると、39歳前後と69歳前後をピークとする二峰性があり、しかも、60歳以上の医師が医師総数の25%を占め、医師の高齢化が著しいことを示している。
これまで地域医療を支えてきた医師の高齢化、リタイア、後継者の確保難等による医師の地域的偏在は解消されず、むしろ拡大する傾向にある。この傾向は、へき地、離島等において特に顕著である。このため、へき地等の医師の確保が困難な都道府県の一部にあっては、県立中央病院等に「地域医療部」「総合診療科」「へき地医療支援センター」等を設置し、システムとしてへき地等の医療を総合的に支援するとともに、へき地等の医師の安定的確保と住民に対する質の高い保健・医療・福祉サービスの提供を促進しつつある。これらの機関の多くは、へき地等での医療体験を有する自治医科大学卒業生が関与しているが、組織や運営面で試行錯誤を重ねているのが現状であり、必ずしも円滑に横能しているとは言い難い。
医師一人の力では限界のあるへき地等の医療の永続的な改善は、実地医療に対する支援はもとより、医師としての生涯教育、子弟の教育等、医師のライフサイクルにも配慮した地域医療のシステム化によって可能となると考えられる。
都道府県の一部で設置されている県立病院等の地域医療部、総合診療部等は、システム化の先進的事例であるが、地域医療部・総合診療部等を設置している県はもとより、新狂に設置しようとする都道府県にあっても、機関の持つべき機能、病院内の位置付け、院内の役割分担等、地域医療のシステムの在り方が検討課題となっている。

 

研究の目的
都道府県におけるへき地医療支援システムの現状を調査、比較検討し、医療事情、医療ニーズに応じた望ましい地域医療のシステム化に関する都道府県への指針とする。

 

研究実施方法
全都道府県を対象に、代診医の派遣等へき地医療に対する支援事業の実施状況についてアンケートにより基本調査を実施した。

 

1 基本調査の結果
へき地等の医療に対する支援事業を実施しているのは19都道府県であった。このうち、
?@制度として実施 15都道県

 

 

 

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