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3. 焼却処理の効果

3.1 焼却処理の技術的効果

(1)ムース化油防除の実態と技術的問題点
流出油防除に当たって、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律第43条の2に基づく「排出油防除計画」の中では、東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海等の16海域を対象に「流出油はオイルフェンスを積極的に活用して、48時間以内に機械的な方法で80%を回収し、残り20%は油処理剤、油吸着材等により処理する。」という考え方をもとに、B重油を対象油種として、オイルフェンス、油回収装置、油処理剤、油吸着材等の防除資機材の整備が図られてきている。
流出油の防除に当たって重要なことは、油流出後、早期に、油が沖合を漂流しているうちに機械力等を動員して流出油の回収あるいは油処理剤による油の乳化分散を図ることである。しかしながら、外洋で大量の原油や重油流出事故が発生した場合、厳しい気象海象条件等により、機械的回収や油処理剤による処理を効率的に行うことは困難となることが多く、海上に流出した油は時間の経過につれて海水を取り込んで油中水滴型のエマルジョン、すなわちムース化油となるが、ムース化が進み高粘度化した状態に至っては、現有の機械的回収装置あるいは油処理剤をもってしても十分にその機能を発揮させることは難しい。
最近の事故事例をみると、1990年1月25日、京都府経ケ岬付近海岸線で発生した貨物船「マリタイム・ガーディニア」号座礁事故で流出した大量のC重油等燃料油(約970kl)の防除においては、季節風と荒波等により海岸付近の岩場に漂着した流出油は急速にムース化が進み、岩の間に入り込んだ油の回収・処理には、最終的には人海戦術によるひしゃく、スコップ等の原始的道具を用いる方法しか有効な防除方法はなく、延べ約20,000名の人員により約60日間の作業日数を費やしたのが現状である。
また、1993年5月31日、福島県塩屋埼沖で発生した内航タンカー「泰光丸」の衝突事故では、流出した貨物油のC重油(約570kl)は、事故から3日後に低気圧の影響による南東の風によって塩屋埼から南方の沿岸に圧流され、その油の防除においては、相当量の油処理剤が使用されたが有効に処理できず海岸に

 

 

 

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