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2.3.2 海洋生態系に及ぼす影響
ムース化油の焼却処理における発熱量の97〜98%は上方及び外側に向かって放出されるため5)、油層の下部の海水に吸収される熱量は、一般には無視しうる程度のわずかなものに過ぎない。特に燃焼しているムース化油の下の海水が潮流で動いている状況では、海水の交換が連続的に行われており、水相による熱吸収は極めて微々たるもので、問題とはならない。また、この焼却処理実験で使用した処理薬剤の成分について、水質汚濁にかかわる規制基準の対象物質の有無を調査した結果、対象24物質1カドミウム、全シアン、有機リン、鉛、6価クロム、ヒ素、総水銀、アルキル水銀、PCB、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレン、1,3−ジクロロプロペン(D−D)、チウラム、シマジン(CAT)、チオペンカルブ(ペンチオカーブ)、ベンゼン、セレン〕のいずれもが検出されなかった6)。
さらにムース化油を焼却する際に処理薬剤として使用する乳化破壊剤及び溶剤の海水への溶解状況を燃焼の前後で比較分析したところ、ともに4物質の溶解が認められたが6)、それらの濃度は焼却前後において差が認められなかった。C重油のムース化油に処理薬剤を散布して燃焼させた後の残渣水(当然上記4物質が溶存している。)の海洋生物への影響を評価するために、ヒメダカを対象に試験を行ったが、24,000ppmでヒメダカの半数致死添加量が得られず、有害作用を検出することはできなかった7)。残渣水の透明度は、燃焼前の人工海水の透明度とほとんど変化がなく8)、海産藻類の光合成に対する阻害作用も考慮する必要のないことが明白である。
以上の結果を総合して判断すると、海上でのムース化油の焼却処理は、海洋生態系に影響を及ぼすことはほぼありえないと思われる。

 

2.3.3 気象海象による影響
我が国においては、未だ海上におけるムース化油の焼却実験が実施されていないので、ノルウェー等諸外国における新鮮な原油を使った海上実験の結果を参考にせざるをえないが、海上に流出した油の焼却処理の実施は気象海象によって左右される。いいかえれば、気象海象の影響を受ける波浪、作業船の作業限界、流

 

 

 

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