
2.1.3 処理薬剤の散布と点火の方法
ムース化した流出油を焼却処理するためには、前処理として、界面活性剤系の処理薬剤を油面に均一に散布してムース化油のエマルジョン構造を破壊し、油と水に分離した後に強力な着火源により点火することが必要である。
具体的には、次のような方法が実験により確認されており、有効であると考えられる。
(1)散布方法
処理薬剤の散布の方法としては、第1章でも述べたように、人手による散布や小型の動力ポンプを使用した散布などいろいろな方法が考えられるが、重要なことは散布した処理薬剤が油量に対して効率的に作用するように散布することである。
本焼却処理法においては広範囲を一度に焼却処理することは想定してなく、作業の安全性及び周囲の状況を考慮して設定された範囲を順次繰り返して焼却処理する。従って、処理薬剤の油水分離効果が最大限に発揮されるよう、油面に満遍なく可能な限り均等に散布することが必要である。
このようなことを考えると、作業船に搭載可能な可搬式の小型動力ポンプを利用した噴霧状散布が最適であると考えられる。処理薬剤を棒状の液流にして散布する方法では、油層の厚さにもよるが、処理薬剤が油層を突き抜けて下層の海水と先に反応するため、油層に対する浸透効果が薄れることが懸念される。このことは、実験においても確認されている。
油面上に噴霧状に散布された処理薬剤は、波浪による動揺により次第に撹拌され油層に浸透し油水分離効果を十分に発揮することが予想される。
ムース化油を界面活性剤系の処理薬剤で効率よく油水分離させるためには、処理薬剤をいかに長く油面と接触させながら、油層内部に浸透させるかが重要である。
(2)点火方法
ムース化油の焼却処理は、化学処理された蒸発成分の少ない油分を燃焼させるものであることから、点火に当たってばかなり強力な着火源を必要とする。
本調査研究では、風のある海上での使用を考慮して、市販の材料で次の条件を満たす点火剤の作成を試みた。
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