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両相の比重差が小さいほど安定であり、連続相の粘度が高いほどエマルジョンの破壊は遅くなる。
エマルジョンを安定化させるため加えられる第3の物質は乳化剤である。
乳化剤はまた液体の細分化に必要なエネルギーを減少させて、乳化(分散)を容易にする作用も有している。
乳化剤として最もよく用いられるのが界面活性剤であり、このほかに高分子物質やまれに微粉体も乳化剤として作用する。
(3)油の組成が及ぼす影響
原油と石油製品は、ともに炭化水素化合物の複雑な混合物であり、一般的な特性決定では、5種類の大まかなカテゴリーに属する化合物を含むと考えられる。すなわち、分子量が小さい?脂肪族と?芳香族、分子量が大きい?アスファルテン、?レジン、?ワックスである2)。
これらが相互作用をすることにより、全ての成分が液状を維持することを可能としている。すなわち、分子量が小さい成分(脂肪族化合物、芳香族化合物)は、可溶性の低い分子量の大きい成分(アスファルテン、レジン、ワックス)にとって溶媒として機能する。このように複雑な混合物は、油全体の中で生じる溶解相互作用が維持され、熱力学的条件が一定である限りば、比較的安定性の高い液相を維持することを可能としている。
安定な油中水滴型エマルジョンの生成傾向に元の油の初期組成が大きな影響を及ぼす可能性があることについては、多数の研究者が報告している。例えば、ワックス、レジン、アスファルテン成分の中の天然界面活性物質の存在とエマルジョンの生成との間に相関性が認められている。Bridieらは、海水中のクウェート原油中の200℃を超える成分(灯油の一部、軽油及び重油)を撹拌することで、安定なエマルジョンを得ることができたと報告している3)。これに対して、アスファルテン成分とワックス成分を除去した後に同一の実験を行った場合は、安定なエマルジョンは生成されなかった。Bobraは、白然の風化プロセスにおいて低分子量の脂肪族や芳香族(すなわち、元の油において、アスファルテン、ワックス、レジンを溶解した状態に保つための溶媒物質)が失われることにより、高分子量成分の晶出が進み、これに付随して、油中水滴型エマルジョンが増えるという見解をとっている3)。

 

 

 

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