
1.2 焼却処理法の基本的考え方
本焼却処理法では普通には燃えないムース化油を対象とする。よって、これを他の熱源によらず、それ自体で燃焼させて焼却させるためには、まずムース化油を可燃性のものに変えなければならない。その点、本法は次の二つの過程により構成きれる。一つはムース化油の可燃化であり、他はその焼却処理である。
(1)ムース化油の可燃化
ムース化油を可燃性のものに変化させるにはどうすればよいか。これを検討するために、まず石油類がムース化されるとなぜ不燃性になるのかを考えてみると、その理由は前にも触れたように、ムース化油が油を分散媒、水を分散相としたエマルジョンになっているところにある。つまり、そこでは油中へ水が分散した構造を呈し、その中に水分を多量に含むためと推定される。当然、その含水量はもとの油種、エマルジョンの生成条件その他の要因によって違うが、いずれにしても、これらを可燃性にするためには、その分散系を破壊し、油と水を分離することが必要になる。
それではこのためにはどんな手段があるのだろう。最も考え易いのは化学処理であり、界面活性剤系の薬剤の散布であろう。なぜならば、適切な界面活性剤を用いれば、分散媒である油と分散相である水の界面にこのものが作用して界面の性質を大きく変化させ、分散系を壊すことが期待されるからである。
となれば、次にはこのような特性を持った界面活性剤を探す必要があるが、一般的に言って、これには陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、両性イオン系の四つがある。そこでこれらの中のいずれの界面活性剤が有効かを決めていかなくてはならないが、ここで一つのヒントになるのは、界面活性剤の用途の一つとなっている油水分離用ないし乳化破壊用の界面活性剤の存在である。もともとこれら薬剤の作用は乳濁液(エマルジョン)を破壊して油水分離を起こさせることが目的であり、それらが油水分離に多少とも役立つことは期待してもよさそうだからである。
そのため、本焼却処理法においては、この乳化破壊剤を中心にそれをムース化油に散布してその可燃化を図ることを考えた。とすると効果のありそうな界面活性剤の成分は、陰イオン系(アニオン界面活性剤)のアルキル硫酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、非イオン系(ノ
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